33 / 132

第33話

 佑里斗は帰宅すると『今日も頑張った〜』と自分を褒めてソファーに倒れる。  琉生はまだ帰ってきていない。  夕飯はどうしよう。彼は佑里斗に家事をしろなんて一切言わないが、住まわせてもらっているので、できる限り家事をするようにはしている。  夕飯を作った時、琉生は喜んでくれるし、「美味しい。ご馳走様」と褒めてもくれる。  掃除や洗濯をすれば「ありがとう」と言ってくれる。  気遣いもできる上に優しさもある。  前の番──隆志とは大違いだと、寂しさに似た感情が心を埋めていく。涙腺が少し弱くなっているのか、視界も涙で滲んでいた。  勉強したから疲れたのか、いつもより感情の浮き沈みが激しい。 「ただいまぁ。帰ってるー?」 「っぁ、おかえりなさい!」  暗い気持ちでいると、琉生が帰ってきた。 「今日の飯どうする? また鍋食べたくなって材料買ってきたんだけど、一緒に食べる?」 「え、いいの」 「いいに決まってるだろ。……ていうか何その顔。なんかあった?」  琉生帰宅してすぐ、佑里斗の表情がいつもと違い少し雲がかかっていることに気づいた。  佑里斗はギクッとして『この人はなんで全部わかるんだろう』と思いながら苦笑する。 「ちょっと……考え事」 「何、難しい事? ……あんまり考えすぎるなよ。解決策が見つからないなら一緒に考えてやるし」 「……前の番のこと、思い出しちゃって」  佑里斗の言葉を聞いて琉生は動きを止める。  思っていたよりも重たい話だった。  野菜を切りながら聞くような話じゃないと思い、荷物を床に置き佑里斗を見る。 「先輩は気遣いもできるし、優しいし、いっぱい『ありがとう』も言ってくれた。でも……あの人はそう言うこと言ってくれないし、気遣いとか優しさとか……浮気されてる時点で無いな。はは、」  話している途中で悲しくなって、片手で濡れた目元を隠した。一人で頑張らなきゃと思っていた過去の自分が、今は少し恥ずかしい。  佑里斗が泣いていると気づいた琉生は、咄嗟に佑里斗を抱き寄せて背中をトントンと撫でた。

ともだちにシェアしよう!