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第38話
前の番である隆志との発情期の過ごし方といえば、番になる前はずっと連絡も取らずに家に引きこもっていた記憶しかない。
番になってからは二度発情期があったけれど、隆志が仕事を休まないといけなくなることや、発情期の間は佑里斗が何もできないこともあって、どこかギクシャクしていたのを覚えている。
巣作りしようものなら、汚れるからやめてくれと言われたこともあった。
あの時は酷く傷ついたのを覚えている。
信頼出来るアルファの香りに包まれたいのに、許されなくて悲しくて堪らなかった。
「──佑里斗」
「あ、はい」
「……。大丈夫? まだぼーっとする?」
「……ちょっと疲れたみたいで」
発情期は体力を使う。
そのことを琉生はスマホで調べて知っていた。
なのでシーツを洗おうとしていた佑里斗を慌てて止めて、代わりにそれをしたし、ついでにマットレスを干してあげていたのだ。
それを終えてリビングに行けばソファーに座ったままぼんやりしていた彼が居たので声を掛けたのだが。
「そこで寝転んで休んでな」
「いや、そろそろ動かなきゃ。家事は先輩に任せっきりだったし、勉強もしないといけない」
「家事は別に気にしなくていいけど、勉強はな……。発情期の間は大学に申請を出せば公欠扱いになるだろうからその面は問題無いけど」
「置いてかれちゃうかな……」
不安が佑里斗を襲う。琉生は暗い表情になった彼に向かい「大丈夫だ」と微笑みかける。
「一緒に頑張ろ。一週間分なんてすぐ追いつく」
「……うん」
佑里斗の頭をグシャグシャと撫でる。
琉生はされるがままになっている彼を見ながら、早くいつもの調子に戻れるようにサポートしてあげないとと使命感に心を燃やしていた。
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