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第52話

 唇同士が触れる柔らかい感触。  触れたそれは直ぐに離れて、佑里斗が目を開けると彼も同じようにこちらを見つめていた。 「もっかい(もう一回)いい?」 「……ふふ、うん。何回でもいいよ」  琉生はこれまでの人生で多くの人から好意を寄せられてきたが、本当に好きな人と付き合うのは初めてだった。  何回か触れるだけのそれを繰り返した後、琉生は佑里斗を抱きしめて「ん゛ー……」と小さく唸る。 「好きだ」 「……俺も先輩のこと好き」 「夜ご飯一緒に食べれなかったの、何気にショック」 「確かに寂しかったけど……仕方ないね。俺も勉強頑張らなきゃ」  琉生の背中を撫でながら、まだ少し濡れている彼の髪に顔を寄せる。 「先輩、まだ髪濡れてる」 「うん」 「早く乾かそ」 「うん」  眠いのか、面倒で流しているのか、返事が適当で離してもくれない。  佑里斗は『もぉ……』と思いながら、彼の頭を撫でた。 「……。今日、一緒に寝る?」 「寝る」 「即答だね」 「髪乾かして一緒に寝る」 「わかったよ」  琉生が元の体勢に戻ったので、佑里斗は再びドライヤーを再開し、すぐに髪を乾かし終えると寝る準備をして琉生の部屋に移動した。 「明日の朝は? 早い?」 「いつも通り」  琉生のベッドに寝転び、布団を被る。  隣に寝転んだ琉生はモゾモゾと動くと、佑里斗のお腹に手を回して抱きついた。 「先輩、寝にくくない?」 「これがいい」 「……先輩って恋人には甘えるタイプ?」 「いや……? 初めてだからわからん」 「そっかぁ」  『初めて』その言葉だけで少し嬉しくなって、佑里斗は自分を『単純だな』と思いながら、くるっと寝返りを打ち琉生の方に顔を向ける。 「先輩」 「ん?」 「おやすみなさい」 「うん。おやすみ」  琉生に体を寄せて、優しい香りに包まれながら目を閉じた。

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