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第51話
ベッドに寝転んでからしばらく。
何もせずにいるともう眠りに落ちそうで、重たくなる瞼に逆らうことなく目を閉じようとした時、コンコンとドアをノックされた。
「ん、はーい」
「ごめん、寝てた?」
「ううん、大丈夫」
体を起こして返事をすると、そろりとドアが開いて琉生が覗き込んでくる。
「明日も遅くなるかもしれなくて」
「じゃあ晩ご飯は家で食べない?」
「うん。だからよかったらお昼一緒に食べよ」
「! 食べる!」
ぴょいっと立ち上がって傍に行くと、彼の髪はまだ濡れたままだった。
「先輩、髪乾かさなきゃ風邪ひくよ」
「大丈夫」
「大丈夫じゃなくて。俺がやったげる」
「じゃあお願いする」
琉生を連れて一緒に洗面所に行った佑里斗は、彼の柔らかくサラサラした髪にドライヤーをあてる。
気持ちよさそうに目を細めてされるがままになっている琉生が可愛らしく、甘えてくれているようで内心ホクホクした気持ちである。
「これからは忙しくなりそうなの?」
「んー、いや、今週だけ。来週からはいつも通り」
「そっか」
なら、今週いっぱいは一人で夜ご飯を食べることになるのだろう。
それはやっぱり少し寂しいかも、と静かに俯いた。すると突然、琉生が振り返って佑里斗の両手首を掴んでくる。
慌ててドライヤーのスイッチを消した佑里斗は驚いて「え、何?」とすかさず問いかけた。
「……寂しがって泣いたのかと思った……」
「えぇ……? 泣かないよ」
どうやら本気で勘違いをしたらしい。
琉生は恥ずかしそうに視線を逸らすと、くすくす笑う佑里斗をチラリと盗み見た。
「……キスしていい?」
「え、」
「笑ってるの、可愛いからキスしていい?」
「それ……言ってて恥ずかしくないの……?」
「全然」
琉生の顔が近づく。
佑里斗は拒否する理由もないし、むしろ好きな人からのそれは嬉しくてそっと目を閉じた。
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