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第67話

 食堂でのこともあり、佑里斗は一人で廊下を歩きながら体中に刺さる視線に居心地の悪さを感じていた。    その日最後の講義を終え、佑里斗は琉生にメッセージを送る。  今日は初めて彼と一緒に帰るので、今のところ嫌なことしか起きていないけれど少しは楽しみだ。  ちょっと待ってて、と返信が来たので佑里斗は構内のベンチに座り、ただぼんやりとして時間を潰すことに。  曇っている空を見上げて、明日はここに来たくないなと心の中で弱音を吐く。  いやだめだ! 一度逃げてしまったら次同じようなことが起きた時も闘わせずして終わってしまう!  佑里斗はうぐぐ……と葛藤し、疲れきって背もたれに凭れる。   「ごめん、お待たせ」 「あ、お疲れ様です」  しばらくして琉生が少し息を切らせながらやってきた。  走ってきたようで、佑里斗の顔を心配そうに見るとぐしゃぐしゃ頭を撫でてくる。 「わ!」 「泣いてなかった、よかった」  琉生は佑里斗に一人で泣かれるのが嫌だったので、ホッとして手を差し出す。 「帰ろう」 「うん」  差し出された手をそっと握り立ち上がった佑里斗は「ありがとう」と言って手を離す。 「今日の夜ご飯、何にしますか」 「えー、なんだろ。さすがに暑いし冷麺でもする? この前買って家に置いてるのがある」 「冷麺かぁ、いいですね」 「俺は鍋が一番好きだけど」 「えー? 夏に鍋はやだな」  琉生の乗ってきた車に乗り、ドアを閉めてシートベルトをつける。  公道に出るとすぐ、琉生は佑里斗をちらっと見ると手を伸ばしてまた頭をぐしゃぐしゃに撫でた。 「もう、何……?」  苦笑する佑里斗はされるがままだ。   「もう誰も居ないから、我慢する必要ないよ」 「え?」 「言いたくても言えなかったことがあるだろ。周りは好き勝手言うんだ、お前も我慢しなくていい」  琉生にそう言われた途端、胸の中がキュッと苦しくなって佑里斗の視界は段々と滲んでいく。

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