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第88話
松井と智が待っている空き教室に着いた二人。
佑里斗はドキドキと嫌な緊張を味わいながら、智の近くまで行く。
「待った?」
「んーん。大丈夫。こっちもちょっと話してて、言いたいこと纏まったみたいだし」
琉生と松井はそう言うと、二人を残して少しだけ離れた場所に移動した。
傍に居ると言いたいことも言えないだろうと気を使ってくれたのである。
「あの……来てくれてありがとう」
「うん」
控え目な智の態度がなんだか落ち着かない。
「この間の食堂のことは、本当にごめん」
「!」
目の前で深く頭を下げた智にハッとして、佑里斗は居心地悪く手をモジモジとさせた。
「自分が興味あるからって、状況も考えずにあんなこと言って、最低なことしたって反省してる」
「……」
「許してもらおうなんて、そんな図々しいことは思ってない。ただ謝りたかった。俺のせいで佑里斗が……孤立するようなことに、なってしまって……」
静かに話を聞いた後、佑里斗は小さく息を吐いた。
きっとこの先ずっと彼を許すことはできないけれど、こうして自分の行いを反省して謝れる人間がどのくらいいるだろうと考えると、責めることはできなくて。
「……あの時のことは許せないけど」
顔を上げた智と目線を合わせる。
彼は不安げに視線を逸らすと床を見た。
「うん。許されないことしたってわかってる」
「……でも、もうこのことについては何も言わないよ。こうして謝ってくれたし。ただ……これから、また前のように話せるようになればいいなって、思うよ」
佑里斗は困ったように小さく微笑んだ。
智は目を見開くと、少ししてグッと唇を噛みしめ、大きく頷いた。
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