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第87話

「よかった。ありがとう。……ところで俺、松井先輩の連絡先知らないから、先輩から連絡してもらってもいい……?」 「いいよ。あ、俺もついて行っていい?」 「うん。でも、面白くないよ」  智と話をするだけなので、琉生にとって楽しいことなんてひとつもない。  そういう意味を込めて言えば、彼はほんの少しムッとした顔をした。 「心配だから、ついて行きたいんだよ」 「心配……」 「昨日話しただろ」  琉生にそう言われ、佑里斗は昨日話したことを思い出して反省する。  ちゃんと話したのに、ついいつもの癖で。 「ごめんなさい……」 「いや、謝んなくていいよ」  思わずと言った様子で苦笑した琉生。  佑里斗はそんな彼を見つめて小さく微笑んだ。 「ありがとう」 「ん。……どうする? 食べ終わりそうなら、そろそろ松井に連絡しとくけど」 「あ、うん! お願いします」  佑里斗は残りのカレーをパクパク食べる。  その間に琉生が松井と連絡をとって、お腹いっぱい食べ終わると早速指定された空き教室に向かう。 「琉生……」 「何? どした?」 「……緊張してきた」  直接いじめられた訳では無いけれど、面と向かって智とちゃんと話をすることに心臓がドキドキし始める。 「やっぱりやめとく? 別に無理して行く必要ないし」 「……やめないけど、ゆっくり歩こ」 「いいよ」  琉生の服の裾を掴み、ノロノロ歩く。  そんな佑里斗を面倒くさがるわけでもなく、彼のペースに合わせてゆっくりと歩く琉生は『外だから無理だけど、どうせなら手を繋いであげたいな』と思っていたのだった。

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