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第86話
佑里斗は松井に顔を向けると、申し訳なさそうに眉を八の字にした。
「話は聞こうと思います。でもここじゃ人目があるから……」
「あ、そうだよね。じゃあ……あー……空き教室に行く? 食べ終わったら連絡くれたら……俺、あの子連れて行くし」
琉生はあまり納得していない様子だけれど、佑里斗は自分の思うようにしようと一つ頷いた。
「なるべく早く連絡します」
「うん。よろしく!」
そう言って離れていった松井。
佑里斗はチラッと琉生を盗み見て、視線をカレーに落とした。
「……怒った?」
「怒ってない」
「でも、怖い顔してるよ」
「……怒ってないけど、納得できない。話を聞いてやる必要があるのか?」
「だって……昨日謝りたいって言われた時から、ちょっとモヤモヤしてたんだもん」
それに必要があるのかどうかはわからないけれど、ずっと無視していたって何の解決にもならない。
「前みたいに一緒に居られるとは思わないけど、今みたいな状況がずっと続くのは嫌だし」
「……」
「少しでも傍にいてくれる人が多い方が、俺は嬉しいよ」
琉生は佑里斗の言葉を聞いて静かに頷くと、スプーンを置いて水をごくごく飲む。
いつの間にかお皿は空っぽになっていた。
「わかった。確かにさっき言ってたようなグループワークの時なんかで一緒にいれる人はいた方がいいな」
「……納得してくれた?」
「うん」
スッキリした様子の琉生に佑里斗も安心した。
これでモヤモヤが少しでも解消できるかもしれない。
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