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第93話

「琉生」 「うん」  離れてしまった彼を引き寄せて距離を戻す。  そのまま琉生を引き込むように抱きしめて、佑里斗の上に覆い被さるようになった彼は驚いたようにパシ……っとゆっくり瞬きをする。 「え、佑里斗……?」 「俺も、触っていい?」 「……もちろん」  服の裾から琉生の手が入ってくる。  薄っぺらいお腹を撫でられて、佑里斗は短く息を吐くと彼と同じ様に、彼の服の中に手を入れた。 「き、緊張する」 「うん。心臓すごいドキドキしてる」 「ぁ……」  琉生の手が胸に触れる。  小さな声が佑里斗の口から漏れて、咄嗟に口を手で覆おうとした佑里斗だけれど、琉生の片手にそれを止められてしまう。 「聞きたい」 「っ、恥ずかしい」 「ちょっとだけ恥ずかしいの我慢して」 「……ふふ、なにそれ」  思わず笑ってしまった佑里斗に、琉生もつられて笑う。  笑いあいながら時折キスをして、二人はそれだけでも幸せだった。  琉生にギューっと抱きしめられた佑里斗は、同じように抱きしめ返し、スっと彼の香りを嗅いで体から力が抜けていく。 「琉生……」 「んー?」 「琉生の匂いで力抜けちゃった……」  隠すことなく言えば、琉生は柔らかく微笑んで佑里斗の頬を優しく撫でる。   「ベッド運ぶよ。いい?」 「え、ぁ、ね、寝るだけだよね……?」 「うん。何もしない。一緒に寝るだけ」  佑里斗はホッとしてコクリ頷くと、彼は佑里斗の上から退いてそっと抱き上げた。 「俺重たくなったでしょ」 「まあ、前より健康的になったな」  琉生の部屋に運ばれベッドに寝かされる。  そして今日も二人はくっついたまま眠るのだった。

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