93 / 132
第93話
「琉生」
「うん」
離れてしまった彼を引き寄せて距離を戻す。
そのまま琉生を引き込むように抱きしめて、佑里斗の上に覆い被さるようになった彼は驚いたようにパシ……っとゆっくり瞬きをする。
「え、佑里斗……?」
「俺も、触っていい?」
「……もちろん」
服の裾から琉生の手が入ってくる。
薄っぺらいお腹を撫でられて、佑里斗は短く息を吐くと彼と同じ様に、彼の服の中に手を入れた。
「き、緊張する」
「うん。心臓すごいドキドキしてる」
「ぁ……」
琉生の手が胸に触れる。
小さな声が佑里斗の口から漏れて、咄嗟に口を手で覆おうとした佑里斗だけれど、琉生の片手にそれを止められてしまう。
「聞きたい」
「っ、恥ずかしい」
「ちょっとだけ恥ずかしいの我慢して」
「……ふふ、なにそれ」
思わず笑ってしまった佑里斗に、琉生もつられて笑う。
笑いあいながら時折キスをして、二人はそれだけでも幸せだった。
琉生にギューっと抱きしめられた佑里斗は、同じように抱きしめ返し、スっと彼の香りを嗅いで体から力が抜けていく。
「琉生……」
「んー?」
「琉生の匂いで力抜けちゃった……」
隠すことなく言えば、琉生は柔らかく微笑んで佑里斗の頬を優しく撫でる。
「ベッド運ぶよ。いい?」
「え、ぁ、ね、寝るだけだよね……?」
「うん。何もしない。一緒に寝るだけ」
佑里斗はホッとしてコクリ頷くと、彼は佑里斗の上から退いてそっと抱き上げた。
「俺重たくなったでしょ」
「まあ、前より健康的になったな」
琉生の部屋に運ばれベッドに寝かされる。
そして今日も二人はくっついたまま眠るのだった。
ともだちにシェアしよう!