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第120話
食事をしながら、佑里斗はどこかボンヤリしている。
ふわふわした様子の彼を琉生は心配して、隣に座り手ずからご飯を食べさせているのだが、こてんと甘えるように凭れてきた彼に、琉生は心の中で素数を数えつつ「大丈夫?」と声を掛けた。
「ぅ……」
「もう食べれなさそう?」
「……ん、ごめんね、作ってくれたのに」
「いいよ。俺が食べるし。ちょっと寝転んで休んでろ。ベッドまで運ぼうか?」
「ううん、自分で行けるよ」
ヨイショ、と立ち上がった佑里斗。
そのまま寝室に向かう彼の背中を眺め、ドアが閉まると大きく息を吐いた。
「……やべー……」
思っていた以上にずっときつい。
好きだと自覚する前と、後ではこんなにも感覚が違うのか。
俺の方が抑制剤を飲んだ方がいいのでは……? と思うくらいには落ち着かない。
時折衣擦れに反応して佑里斗が小さな声を漏らすので、気にしないようにしていたのだが体は正直である。
少しずつ苦しくなってくる下履き。
まだもう少し我慢しろと自分に喝を入れる。
ひとまず佑里斗の残したご飯を食べ、食器を片づけた。
さて、軽くシャワーを浴びれるように準備をしようかと思った時、これまで以上に濃くて多いフェロモンが香ってきて。
「っ、」
佑里斗がか細い声で琉生の名前を呼んでいる。
琉生は襲うなんてことにはならないようにと、覚悟を決め寝室のドアを開けた。
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