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第54話 再会

 ある夜、薄暗い部屋の中、市五郎は下半身の違和感で目が覚めた。  ぴちゃぴちゃと水っぽい音が立ち、途端にクッと下腹部に刺激が広がる。心地いい快感にゆっくり目を開けると、布団がこんもりと膨らみかすかに揺れている。  眠る前、あんなに何度も愛し合ったのに……。  市五郎はぼんやり考えながらも愛おしさと快楽を堪能していたが、徐々に意識がはっきりしてきたところでハッと気付いた。  バチッと目が開き視線が数秒、宙を泳ぐ。  まさか、そんな……いや、だって結城さんがこんなこと……。  快楽とは別の興奮が市五郎の脳内を猛スピードで駆け巡り、心臓は早鐘を打った。頭の中で心拍が痛いほど響く。ゴクリとわずかな唾液を緊張と一緒に喉へと追いやり、市五郎はおそるおそる布団をめくった。  目が合った彼は市五郎のモノをパックリと咥えたまま、イタズラっぽく妖艶に微笑む。  その瞬間、市五郎は確信する。  どれだけ彼を探したことか。いや、彼の片鱗はもう見えていた。結城は日々変化している。  先のことなどわかりはしない。枝分かれした人格は近い将来、ゆるやかに統合していくのかもしれない。本来の『真人』に──────  フッと市五郎は心の中で微笑んだ。  私はなんて贅沢者なのだろう。こんなに可愛らしいを独り占めできるのだから。  いずれくるであろうその日まで、大切な恋人たちと共に過ごしていくのだ。  市五郎が手を伸ばす。それに臆することもなく、色っぽく挑発する愛らしい瞳。市五郎は上下する頭や耳、柔らかな頬を撫でながら囁いた。 「会いたかったですよ」 了

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