28 / 91

龍臣との電話(あずさside)

柘榴(ざくろ)が運転する車の後部座席にあずさは蒼炎とともに座り、針葉(しんよう)医院を目指していた。 数分も車を走らせるとあずさは小さくあくびをし、数秒も経たずに今度は大きなあくびをした。 「どうした?眠いか?」 「ん…。ねむい、、ふぁ~あ」 「仕方ないなまだ距離がある。寝ろ」 蒼炎は太ももを叩き頭を太ももに置くよう指示し、あずさの肩を掴みあずさの体勢を整えた 「え…あ…ぅ…悪いよ」 「甘えておけ。ほら、おやすみ」 「うん。おやすみなさい」 あずさは蒼炎の膝枕に龍臣に似た匂いを感じて安心し、ものの数秒で眠りについていった。 眠りについていくらかすると、蒼炎さんに起こされた。 キョロキョロと寝たまままわりを見ると病院の気配はない。 「う…ぅ…っ眠い…」 なんで起こされたんだろ?キョトンとして蒼炎を見あげると電話を渡され 「龍臣だ」 「龍臣さんっ」 聞こえてきた龍臣の声にあずさは飛び起き声を弾ませた。 〝あずさ、大丈夫か?ヒートだそうだが…〝 まだ1日も経ってないのにすごく久しぶりに聞いた気がする。 龍臣さんにあのことを言わなきゃ… 「あ…蒼炎さんが…対処してくれたから。今から病院行くって」 〝病院?〝 「うん。今日のところはなんとかなったけどまだ2日あるから危険だって。ホルモン投与してもらえばなんとかなるかも…って蒼炎さんが」 〝そ、そうか〝 歯切れの悪い、龍臣さんの返事。やっぱり驚くよね。 そう言えば龍臣さんは何の用だったんだろう? 「龍臣さん…龍臣さん?」 〝あ、悪りぃ〝 「電話、何か用だった?」 〝ああ、そうだ。誠哉がな、おまえを恋しがってるんだ。声を聞かせてやってくれ。今、スピーカーにっすから〝 すっかり忘れてた!! ひどいママだ…オレって。 なのに誠哉くんはオレを恋しがってくれて…嬉しいっ 「え…誠哉くんが?誠哉くーん?あずさだよ」 〝あーぶ、まー?〝 へ?いま…聞き違いじゃなきゃママって言った気が!! 「うんっ?いま、まーって言った?もしかしてママって言ったの?誠哉くん!可愛いっ。その場にいたなら抱きしめてたのに!帰ってきたらいっぱい抱っこしてあげるね」 〝あいっ…きゃきゃっ〝 可愛いぃっなんて…尊いんだっ 〝ご機嫌になったな。ママか…。誠哉がそんなこと言う日がくるなんてな。良かった〝 もっと2人の声を聞いていたいけど、蒼炎さんに浴衣のたもとを引っ張られ、 蒼炎さんが窓の外を指差した。 病院だ! 電話、切らなきゃ 「誠哉くん、おやすみ。龍臣さんもおやすみなさい」 〝ああ、おやすみ。また明日電話する〝 「はい。待ってます」 電話を切ると蒼炎にあずさは電話を返し お辞儀をした。 「あの、電話ありがとうございます!」 「よかったな?針葉医院へついた。車から降りるぞ」 「はい」 あずさは蒼炎に促され、針葉医院の駐車場へと足を降ろした。

ともだちにシェアしよう!