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診察台
座り込んでしまったあずさを樹医師は軽々と抱きあげ、内診台様の椅子に座らせた。
「嘘っ!なんでっ、オレそんなに軽い?」
「いや、平均並みだと思いますよ。日々いろいろな患者さんが来ますからね。陣痛を迎えて動けなくなっちゃってる子をここに乗せたりね。抱え慣れているだけです。」
「ね、ねぇ。先生。妊娠したら陣痛…。あるの?」
「何を言っているのかな?きみは。あって当然です。じゃなきゃ赤ちゃんが出てこれないでしょう?」
「出産、怖っ」
あずさは想像もできないような世界に怯えて震えた。
あずさのその様子に樹医師は首を傾げ
「蒼炎さん、彼は龍臣さんの番になるんですよね?」
「そうだ。すでに情も何度も交わしている」
「つまりは将来的に子どもを授かることになりますよね?」
「そうだな。まだ本人にその覚悟が無いようだがな。まあまだ、誠哉に手がかかる時期だ。子は授かりもんだ。焦って作るものじゃない。少し手が離れれば誠哉に兄弟を作ってやりたくなるはずだ」
「んー…その前にいろいろとお勉強をしておいた方が良さそうですね?あまりにも知識が無さすぎて先に妊娠してしまうと理解が追いつかないまま出産を迎えてしまうかもしれない。そうなればパニック状態になって少々…いや、かなり?面倒なことになりそうですから」
「そのあたりの教育は樹に任せるよ。やはり餅は餅屋だ」
「ご安心を。この20年裏稼業の皆さまの大事なΩくんたちの妊娠•出産を何千人と見守ってきましたから」
あずさは樹医師をマジマジと見
「先生って…産科医なの?」
「いかにも。ちゃんと医師免許も持っていますよ。さて、長話をしていても仕方ないので進めましょうか?蒼炎さん、ついでにブライダルチェックもしていきますか?」
「任せる」
「かしこまりました。まずはこの溢れでているフェロモンをなんとかしましょうか」
樹医師は長い髪の毛を頭のてっぺん近くでポニーテールに結び、あずさの体を診察台へと固定していった
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