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青葉 倒れる
ふたばの唇の動きを読んだあずさは、友人からの祝福が嬉しくてその幸せを噛みしめだらしない顔を浮かべていた。
ニヤけるあずさの表情を腰を屈めて龍臣はのぞき見、小声であずさの耳元にささやき
「初夜が待ち切れなぁいって?やらしいな、あずさ」
「…っ!!」
予想だにしない龍臣の言葉にあずさは驚いて目を見開き、龍臣の言葉が聞こえた青葉は立ち膝をついて手を伸ばしてポコンっと龍臣の頭を叩き
「このあほ息子っ。めでたい席で何を言いだすの!あずさが面食らっちゃってるじゃないかっ」
「いってぇ~な。この鬼母」
「もう少し、時と場合を考えなさい」
冷たく言い放つ青葉に同調して組のトップである蒼炎 は深く頷き
「龍臣。母さんの言う通りだ」
「ったく…親父は母さんの尻に敷かれすぎだし」
「たーつおーみ!反省してるのっ!?」
怒った青葉が勢いよく立ち上がると、龍臣は青葉に殴られないように両手で頭をガードし、目を閉じ
「…っ。………ん?」
あ?なんだ…?いっこうに殴られる気配が、、
おそるおそる目を開けると、着物の後ろのおしりにあたる部分を血に染めた青葉がうつぶせた状態で倒れていて、そのかたわらで蒼炎が体を震わせながら青葉を見下ろしていて龍臣は驚き身を固めた。
「な…んだよ。その血……っ。母さんっ」
龍臣が慌てて青葉を抱き起こそうとすると、紅葉と樹医師が2人の元に走り寄り
「龍臣くん待った!!起こして大丈夫か樹先生に診てもらってから」
「わ…悪い」
動揺を隠せない龍臣の手をあずさはそっと握り
「龍臣さん、大丈夫だよ。樹先生も紅葉さんもいるし」
「お…おぅ」
樹が手早く青葉の状態を確認すると、蒼炎に視線を送り
「下血か不正出血かはここでは分かりませんが…。針葉医院へ連れていきましょう。とりあえず青葉さんを起こしていただいて大丈夫です。紅葉、車の支度を」
「はい、先生」
紅葉が広間から出ていくと、蒼炎は青葉を横に抱きあげ龍臣とあずさに向かい
「龍臣、あずさ。留守を頼む」
「わ、分かった」
「はい」
2人の返事を聞くと、樹医師の先導で蒼炎は青葉を抱いて歩き出した
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