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第6話:ペット魔獣の子
「んー、これ魔獣か??」
「どうなんでしょ?」
「お前、イースに行ってたんだっけか?」
グリズやホックスの言葉に、首を縦に振りながらずっと服の上からボルテは撫でていた。
「そしたら、ペット魔獣って奴か?」
シュベールが、胸元に顔を突っ込む形で、黒い塊の臭いを嗅ごうとする。
「あの・・・、ちょっと・・・」
え、絵面が・・・。
ボルテの胸元を、クマと犬、狐獣人が覗き込んでは、顔を突っ込もうとしてる・・・
その図は、たまたま通り掛かったウサギ獣人の顔色が真っ赤に成ったと思ったら、ボルテと目が合った瞬間に真っ青になって逃げていく程だった。
「あー、すまん。」
思わず、一歩下がったボルテに 3 人も自分達の様子に、気が付き、距離を取った。
「んんっ! た、多分だが、それはペット魔獣の子だろうな。最近、流行りで飼ったは良いが、目を
離した隙に繁殖して、増えたのを捨てるのがイースじゃ問題になってるらしいぞ。」
「そうなんですか!そしたら、コイツも?」
「かも知れないな。けど、こんなに小さいんじゃ、まだ乳離れしてないかもな?」
「!! さっき、コイツ震えてて・・・。」
「あー、じゃぁさっさと温めて、ミルクでもやらねーとな。あと、排泄が出来りゃ問題無い
が・・・」
「排泄・・・。」
「飯食って、してる様子なかったら、尻の辺り刺激してやれば出るから。」
「はい!!」
思わず、いつもの様に勢い良く、返事をして慌てて胸元を覗き込む。
案の定、胸元の黒い塊が起きてしまった様だった。
ピクッツ・・・
しぴぴっと、黒い塊の耳が動く。のそっと、顔を上げたのかモゾモゾと胸元が動く。
「「「おー、金眼だ!」」」
!!!!!!!!!!!!!!!!
「ちょ!!怖い顔見せないでください!!」
「オイオイ!失礼だぞ!!コイツはそうかも知れんが!オレは怖くないだろ!!」
「はぁ!? お前のその顔だって十分怖ぇーだろうよ!!」
「そうですよ、ボルテ!この私の何処がこの二人と同じなんですか!」
ボルテが、胸元をかばう様に 3 人の屈強な獣人に吼えれば、負けずに自分よりコイツが!と指差し合 う。かばわれた胸元で、フィガロは小さく溜息をついた。
ボルテと呼ばれた男の胸元は、ふかふかで暖かかった。
気を抜くと、ついふみふみと前足を動かしたくなってしまう。
大人になってから、こんな風に大事に抱えられる事は無かった。兄弟とは仲は良かったがここまで距離は近く無かった。
うにゅ。
ふみふみ・・・ふみふみ・・・ごろろぉ・・・。
ボルテの胸元から聞こえてきた音に、3 人から毒気が抜ける。
「まぁ、家籠りの間しっかり世話してやんな。」
「はい!」
...家籠り?
聞きなれない言葉に、動かしていた手を止める。
イースよりも肌寒い気候。
フィガロを抱いている銀髪の男もだが、さっきの獣人達も明らかに大型獣の獣人。
イースは、比較的小型から中型の獣人が多く、ノーザは気候に耐えられる様な大型の獣人が多く住んでいた。
確か、北は寒さに強い獣人が多いんだっけ・・・。
やっぱり・・・ここは、北の大陸なのかな・・・。
ポンポンとリズミカルに与えられる振動と、暖かさにフィガロはまた眠りについた。
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