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第6話
挙式代は事情が事情なだけに一部負担で済んだ。
來にとっては也夜が個人の行動で事故に遭い、大勢の人たちに迷惑をかけてしまったという負目もあるが式場のスタッフたちは也夜の回復を祈ってくれた。
也夜が人気のメンズモデルだから、というのもあるかもしれない。
彼はトップモデルだがカミングアウトをしてもファンは離れなかったのも容姿だけではなく穏やかで気の遣い方がうまい人間なのであろう。もしくは人望、環境なのだろうか。來は全てにおいて羨ましくなった。
なぜならば自分はカミングアウトした時点で家族とも縁が切れかけ、友人も去っていき辛い思いをしてきた。そこに大輝が声を掛けてきて彼のもとで仕事をし、今では美容師をしている。
「なぁ、誰に会いに行ったんだ……也夜」
夜、本当は初夜に当たる時だったが買ったベッドには也夜でなく大輝といる來。
來は大輝に寄り添う。大輝も同性愛者であり、2年前までこの2人は付き合っていた。流石に今は体の関係まで至らないが大輝の温かい肌を久しぶりに感じて少し落ち着いてきたが、この二年間は也夜の温もりを感じていたため大輝に抱きついていいものか悩んだが彼が拒否しなかったのかつい昔の感覚で共にいる。
「……わからない。結婚式にもこなくて僕も知らない人だって」
「で、会いに行ってもいいよって?」
「うん……」
「スマホは車に轢かれてぐちゃぐちゃだけどね、通信会社で調べれば相手はわかるよ。調べようか?」
「そんなことしてどうなるんだよ……その人を責めるの?」
「……だよな。でもその人らしき人は来たか?」
「わからない」
「入れ替わり立ち替わり来てくれたし連絡もたくさん来た。みんなに聞いてみよう」
來は首を横に振る。
「そんなことしても也夜は目を覚さない」
「……そうだよな、意味がないよな」
すると2人は見つめ合う。何かしら妙な間があるが大輝から來を押し倒し、キスをしようとするが不意に來は逸らしてしまった。
「こんな時に元恋人が慰めると言ってそばにいるのもさ……しかも下心あるだなんて最低だな、自分」
「そんなことないけど、ずっとそばにいてくれてありがとう」
來は大輝に抱きつき脚を絡ませあう。久しぶりの元恋人の温もり。來は也夜があんな状態にも関わらず寂しさのあまりにこんなことをしてしまう自分が最低だと思ってはいたが心も体もぽっかり空いたものを埋め尽くしたかった。2人の体温はさらに暑くなる。
だがあえてキスはせず唇は互いの首筋を沿わせる。
「……ごめん、やっぱやめておこう」
大輝は唇を離して布団から出た。
「大輝……」
來は突然のことにびっくりもしつつトイレに入って行った大輝にすこし虚しさを感じる。自分のは萎えていた。
大輝を也夜のかわりにしてしまおうとしていた自分を恥じた。
数分後、大輝が戻ってきた。
「來はいかなくていいか?」
「いきなりやっぱやめようっていうから萎えちゃったからいいよ」
「ごめん、こんなんだから來に愛想つかれたっけ」
「……違うでしょ」
「だっけ」
とぼけたふりをして、と來は思った。愛想尽かしたのは大輝の方からだと。
來が高校デビューしようと髪の毛を染めに大輝の店に来たのが始まりだった。
「明日からは店を開けるし……來は心配かもだが明日の朝次第でいいよ。本当は動いていたほうが気がまぎれるかもだがそれは無理だろうし」
「……ごめん、明日も少し休む。明後日には」
「ああ。なんとか回せそうだから。気がそぞろでお客様に迷惑かけてはいけない」
「うん」
そして大輝はもう寝よう、と目を瞑り來を抱き寄せすぐ寝てしまった。
寝るのが早い、それを自慢していた大輝。來は反対に寝るまでに時間がかかる。
そういえばと也夜はなかなか寝付けない來に眠るまで付き合ってくれた、と。だが也夜とのことを思い出すだけで苦しくなる。また夜は長くなりそうだ、來は大輝に背を向けて涙を1人流した。
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