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第7話

 美園から連絡が来たのはそれから2週間後、來は美容室に復帰していた。結局二週間かかった。  右手薬指にあった指輪、それを外すべきか悩んだ。常連客は來が也夜とパートナー協定を結ぶのは知っていたし、結婚式もすることも、そして也夜が事故で昏睡状態になってることも知っている。  だから來を見ると誰もが也夜はどうしたと聞いてくる。中には気を遣って聞かないものもいるが食が進まずあまり睡眠時間も取れず見た目からして痩せ細っていた來が2週間で復帰したのは……まだ早すぎたか? と大輝は思ったが日に日に仕事に復帰し手を動かし客と接し話すにつれ少しずつ回復していた。  愛する也夜に家族ではないというだけで面会もできず、様子もわからないのに。  それは大輝が手を妬いて世話をした。結局は元恋人のことが気が気でなかったようだ。  そんな中に昼休憩といっても14時すぎた頃だ。ようやく来た、上社家と來を橋渡ししている存在……美園から連絡がきた。  来ました来ました、となぜか待ち侘びていたほどではなかったがようやく連絡がと落ち着いて画面を見た。 『お久しぶりです。ようやくお兄ちゃんの病室に入れました。本当に寝ているかのよう。写真は撮れませんでした、ごめん』  美園とは全くメールをしていなかったわけではない。だから普通に長く文章をやり取りすることもあるからこういう文体は普通だと。 「……」  來は無言で返す。 『ありがとう。やっぱり病室は僕は入れないよね』 『うん。ごめん……病院も厳しいよ。ほんとなんなんだろうね。何もできなくてごめん』  やっぱり、とため息をつく來。会えなくても一目でも見てみたい。なぜ写真を撮らなかったんだともどかしくなる。  だったら病院に行っても良い、そう思うのだが來は何故か足が動かない。  それはまた也夜の父から言われた言葉が來に重くのしかかる。  本当は2人の結婚を快く思っていなかったのかと。それを同意した也夜の母も。  也夜がいた時は自分を快く迎えてくれたかと思ったのだが違ったのかと憤りを感じる來。  自分たちが同性婚だからか? 唇を強く噛む。  この復帰するまでの間、友人たちに話を聞いてもらったり励ましてもらった。  一番親身であったのは也夜と共に家族ぐるみ同然だった槻山湊音、李仁夫夫だった。  彼らは8年前にパートナーシップ協定を結んだ。ある意味夫夫の先輩ともなる人たちだ。大輝とも親交があり、店の常連でもあった2人。意外と喋る方の李仁、人見知りな湊音。2人からしたら一回り上で兄的存在。  來は湊音と特に親しかった。湊音は高校教師で年下のものと話すというスキルは長けているようだった。  湊音もどこかしら波長が合うのか來を可愛がった。  決して体の関係はあったわけではない。  結婚に関しても來は何度も湊音たちに相談をした。そして事故に遭った後も数日してから訪ねてきてくれたり。  湊音は高校教師という職柄、今までに親や家族を亡くしたり病気になったりいろんなべにぶつかったりなどで困る生徒を相手にしてきたのであろう、恋人と会えない來がほっとけなかったようだ。  それも二週間、という期間で仕事に復帰できたのだろう。  大輝もだったが湊音からも 『とにかく今は仕事に戻り体や手を動かし忘れる方がいい』  と。だが湊音は仕事の帰りに來の元に来て晩御飯を作りに来てくれたのだ。教職だけでなく剣道部顧問の湊音は自分の体がへとへとなのにも関わらず。大輝は料理が苦手だったから呼び寄せたらしい。  最初來は台所で彼が料理を作るのをみているだけであったが次第に來も手伝うようになり職場復帰前にはほぼ1人で料理をするようになって食事しながら笑うことを取り戻した來。  普段は也夜がご飯を作っていた。モデルをしてるからと健康管理は食事からだと外食よりも也夜は自炊にこだわっていた。  來は全くやらなかったがやらなかっただけで自分も作れるんだ、そんなことを発見した。  以前バーテンダーで調理師免許や栄養管理士の免許を持つ李仁にも料理を習い寂しさを料理、仕事で埋め込むしかなかった。  そして気づけば李仁が來の家によく出入りするようになり、身体の関係を持ってしまっていた。  李仁は全く抵抗はせず、受け入れた。彼はとにかく誰とでもセックスをする同性愛者というより人が好き、という。  もちろん李仁は也夜とは全く違う。体格もだ。形も。大輝は流石に見捨てはしなかったが身体の関係は拒否し、仕事以外は2人きりにはならないようにしていた。  來の依存体質を知ってるから。それがあって別れたのもある。  だから身近でそばにいてくれた李仁なら身体も許してくれるだろう、と思ったのだ。  身体の寂しさは流石に料理と仕事では埋め尽くせなかった。だがどちらかといえば自分よりも若い心が弱い來を見て魅力に取り憑かれた李仁の性欲処理のように扱われていた。  心の隙間の空いた來はそれに利用されていたとわかってはいたがそれしか也夜を忘れるにはそうするしかなかった。  その間にも美園からは近況が送られてきた。が次第に見なくなった。じゃないと也夜を忘れることはできない。  仕事は順調だったしご飯もしっかり食べ健康的に戻ったが、それ以外は全て堕落していた。

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