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アルクレートの幸せ

私が吸血鬼になったのは、随分と昔のことだ。もう薄れかかっている記憶だけれど、あの日は一人家の前で遊んでいたと思う。平和な日常でしかなかったのに、一瞬にして過ぎ去った。吸血鬼の始祖が気まぐれに現れ、私を吸血鬼にした。ただ一言、吸血鬼の始祖ファルク・ジエルは言った。 「君はとても美しい」 それは私の悪夢だ。 外を見ると星が輝いていた。見慣れた静かな部屋。誰もいない部屋。ふらりと立ち上がって部屋を出る。 「アルク様は?」 「無茶させるから寝込んでいるんです。反省してください! 特にアカ」 「私は悪くない」 「悪くないことないでしょう! あと知らん顔してますけどクロもですよ」 「てめぇの開発した首輪だろ」 「私の知らぬところで威力を最大にしたのは二人でしょう! シロもなんとか言ってください」 「えー、次は僕が血を吸ってもらう番だからね!」 「そういうことじゃ……」 一階が騒がしい。ああ、そうか。もう寂しい夜は終わったのか。 「あっ! アルク!」 「アルクレート、寝すぎだろ」 「父様、まだ眠っていなくて大丈夫なのか」 「アルク様、聞いてください。みんな年長者の私の説教は無視ですよ」 あの日、消えた声は今ここにある。 あの日、消えた想いは今ここにある。 あの日、消えた私の子らは今ここにある。 「アルク様、泣いてるの?」 みな驚いている。私も唐突に流れた涙に驚いた。震える唇。もう離さない。離したくない。たとえ、君たちが老いて死に果てたとしても、来世でまた迎えに行く。もう逃がさない。 「おかえり」 だからもう私の側を離れないで。

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