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第5話

ライブ会場に向かう列車の中では、ユウにダイチはさりげなく窓際を譲った。 が、ユウは車窓からの景色より、スコアやスケジュールの用紙に目を通す、ダイチの伏せられた真剣な眼差しの横顔を見つめた。 長めの金色の髪が似合う、白くも端正な横顔。 列車では2人同士、並んで席を取っていた為、前席にはコウとサトルが並び座っていて、時折、気ままに話しているようだ。 ユウの視線に気づき、ダイチが用紙の束から視線を上げ、ユウを見る。 「どした?」 「ううん。楽しみだな、て思って」 ふわ、とダイチも笑い、 「だな。初日だし、やっぱ緊張するけど」 「大丈夫だよ。...ダイチなら」 一瞬、ダイチは真っ直ぐにユウを見つめ、 「ありがと」 と口にした。 駅弁を頼み、食べた後は少し仮眠し、目的地に到着。 メンバー全員でキャリーケースを引きながらホテルに向かい、会場を軽く下見した後は郷土料理が味わえる居酒屋へ。 メンバーやマネージャーだけでなく、スタッフ全員で乾杯した。 「あ、美味い。これ」 地鶏の刺身を口にしたユウは思わず口元を抑え、目を見開いた。 「だな、新鮮。あー、酒飲みたいかも」 「酒?日本酒?大丈夫?ライブ前日に」 スタッフの1人に笑われ、 「ですね」 とダイチも苦笑した。 「打ち上げで思っきし飲みます」 次いでのダイチの張り切った声にスタッフやメンバー全員が爆笑した。 ◆◆◆ 「はあ、飲んだ、食べた」 メンバーそれぞれに部屋は宛てがわれているが、ダイチはホテルに戻るなりユウの部屋に居座り、ベッドに大の字に寝転んだ。 「ちょ、服着替えなよ」 笑いながらユウが窘める。 「んー...着替えさせて」 「子供か」 ぺし、とユウはダイチの額をデコピンし、いてっ、とダイチは声を上げた。 「寝るんなら部屋戻れば?ダイチ」 傍に座ってダイチを見下ろしたユウに、ゴロン、とダイチが体を翻す。 「大丈夫?緊張とかしてない?」 さっきまでのふさげたダイチではなく、優しいけれど真剣な眼差しに、ユウは惹き込まれそうになった。 (...心配して、部屋に来てくれた、のかな....) 「...少し、してるけど。大丈夫。ライブ始まったら」 「そっか」 ダイチは微笑むとベッドに置かれたユウの手首を持ち、引き寄せた。 ダイチに覆い被さる形になる。 そのまま、ぽんぽん、とまるで子供を諭すかのように背中を優しく叩かれ、ユウは瞼を閉じた。 この人で良かった...。 一度は辞めたBlack Angel。戻って来て良かった...。 心からユウは痛感した。 「...明日の為に体力、温存しとく?」 「え?」 にや、とダイチが狡猾に笑う。 「昨日、してなかったなあ、て」 途端、ユウは硬直し、理解を終えると、バカ!とダイチを叩き、ダイチも爆笑した。 「...ただ、さ」 「ん?」 「...ただ。一緒に眠りたい。ダメ?」 ダイチがきょとん、とした後、微笑む。 「ダメな訳ないだろ。その前にチャチャッとシャワー浴びて寝るか」 「うん」 ホテルのダブルベッドでダイチにくっつき眠りについた。

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