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第14話
ソファに並んで座り、ビールとハイボールで乾杯した。
光は一口飲んだだけで太腿に置いた缶ビールを両手で包み、無言で俯いた。
「飲みすぎた?つまみ、何かあったかな」
立ち上がり、ホテルに着く前にコンビニで買い出ししていた為、ベッドの傍のカウンターに向かう。
「ダイチとユウさん。今頃、ラブラブなんでしょうね」
え、とコウが振り返ると、両手で包み込んでいたビールに落としていた視線はそのままで、少し寂しげにはりかむとビールを飲んだ。
「...知ってたんだ?2人のこと」
「...友達、ていうか、知り合いだから。ダイチと」
「そっか」
ほい、とコウは小さめな小袋に入ったスナック菓子を光に差し出した。
「ありがとうございます」
居酒屋の時は随分、明るかった光だが、本当は敢えて酒を煽り、明るく振舞っていただけだ。
ダイチのことを諦めたはずが、いざ、久しぶりに会うとあまりに懐かしく、そして当時、恋焦がれていたあの感覚を嫌でも思い出さずを得なかった。
テレビで2人が並び、仲良く笑い合う姿を見ると、微笑ましい、と笑顔になるのに...実際、自分の目で見てしまうと、気持ちは裏腹で。きっと実家に帰宅したところで寝つけはせず、下手したら泣いていたかもしれない、と思うと...。
「誘ってくれて良かったです。ありがとうございます、光司さん」
光が笑顔をコウに向け、コウは頬が熱くなるのを感じた。
頬だけではない。
体も。心臓すらも...。
「あ、光、てさ」
「はい」
「あー、恋人とか、いんの?今」
きょとん、と光がコウを見上げる。
「今、ですか。...いないです、特には」
「でも、モテるだろ?光、可愛いしさ」
光が自嘲気味に笑った。
「可愛い、ですか?俺。可愛くないですよ、全然」
「でも、店とかで声、掛けられたりしない?働いててさ。て、ま、相手、男かもだけど」
ハイボールを傾けながら、視線は光を見下ろし、窺った。
「んー...言われはするけど、でも、お酒入ってるし、みんな。酔ってたら、ていうか、ああいう場では誰にでもみんな可愛いとか言いますよ」
光は笑いながらビールを小さく含み、いただきます、とスナックの袋に手を差し入れた。
(...ふーん...。居そうなのにな。男。女とは...)
コウは適当に可愛い女の子を浮かべ、光と並ばせてみた、が、光で霞みそうだな、女の子には悪いけど。
再び、スナック菓子を齧る隣の光を横目に見ながらコウはハイボールを傾けた。
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