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第1話

俺は光。 互いにウケだった晶と交際を初めて、もうすぐ2年が経とうとしている。 1年目は婚約指輪も交換し合い、なかなかラブラブな日々を過ごしたと思う。 ...相変わらず、晶はすぐに真顔になってキレたり、いきなりバチバチ体を叩いたりもするけど、もう慣れた。 というか、晶が必死になるその姿が可愛く愛おしい。 晶にバチバチ叩かれても、痛みよりも喜びを感じる。 ...俺、て変? でも、好きな相手が俺の為に怒って、その痛みなんだから。 ...痛みすら愛おしい。 晶には死んでも言えないけど。 「....は?マゾなの、光」 て、呆れるどころか、あの表情のない醒めた声で言われるのがオチ。 そんな晶は...最近、浮気を始めた...。 俺も晶も身長170に足りない、小柄で痩せ型。 悲しいかな、晶が好きな相手は180という高身長に長い手足、しかも、イケメン。 俺はタイプじゃないけど。 さて、いざ、夕飯だ。 晶は、 「美味しい物ならなんでもいい」 と言うので、手によりをかけ、鯖の竜田揚げとわかめと胡瓜、たこの酢の物、じゃがいもの味噌汁をテーブルに並べ、 「さ、出来たよ、食べよ!」 笑顔で促したが、 「...魚より肉が良かった」 ポツリ、テーブルに並ぶ料理を見下ろしたまま、晶が呟いた。 「だったら肉が食べたい、て言えば良かったのに」 箸を持ち、食べ進めると、少し遅れて、晶も箸を手にした。 「光ならわかると思ったんだもん」 「...エスパーじゃないよ?俺」 ず、と味噌汁の茶碗を持ち、啜りながら、への字口で、いただきます、と口にする晶を見つめた。 「あ。美味しいかも」 さく、と小気味よい音を立て、晶は竜田揚げに齧り付くなり、そう笑みを浮かべ、俺は拍子を抜いた。 「...肉じゃなくってごめんね?」 「ううん。美味しいから許す」 不意にテレビのリモコンを手にした。 見たいバラエティがあったからだ。 が、 「ちょっと!光!もうすぐ、奏様が出演されるんだから!チャンネル変えないで!」 「...奏様、て...」 奏、とは。 今、晶が浮気している男。 STAR☆FIVE、とかいう5人組みアイドルの1人で、ソロでも活躍しており、俳優もやっていたりする。 「光の見たい番組はどうせ録画でしょ?俺の奏様は生だから、同じ空間を生きてる!て痛感できるの、光は録画したら?」 俺の手からリモコンを奪い、晶はさっさとチャンネルを変え、奏とかいう奴がテレビに映るなり、キャー、と女みたいな奇声を上げる。 かと思えば、テレビをガン見したまま、俺の作った夕飯をもぐもぐ。 ....いけ好かない。 俺はテレビに釘付けの晶に頬を膨らませた。 勿論、奏に有頂天な晶が気づく余地はない。

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