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話し逸らします... by光
たまに、ホント女か、て声で、キャー!だとか、
「やっぱり奏様、最高」
目をハートにさせてうっとりしてる晶を目の前に...気分が悪い。
せっかく作った料理も全然、箸進んでないし。
「...ご飯、冷めるよ、晶」
「んー、大丈夫。冷めても美味しいから、光の手料理」
テレビを向いたまま、晶がようやく箸を動かす。
食事に集中する気はないらしい。
俺はガツガツとそんな晶を見ず、飯をかき込んだ。
「ご馳走様!」
食器を重ね、立ち上がり、キッチンに向かった。
ようやく歌番組が終わり、はあ、と甘い息をつき、
「素敵だったあ...奏様」
「...まだ言ってんの。風呂、溜めよ」
風呂に浸かってビールでも飲もう。そうしよう。
風呂から戻ると、既に晶はビールを空けていた。
「...もう飲んでる」
「別にいいじゃん。てかさ、明後日、給料日だね!」
俺と晶は、以前、勤めていたダイニングバーの店長だった、同じくゲイである、類さんとその旦那のイタリア人のマフィが経営する、イタリアンレストランに勤めている。
だから、給料日も同じ、てわけ。
「だね。どうする?どっか行く?映画とか...あ、たまにはショッピングとか?」
思わず笑顔で前のめりになる俺。
「んー。奏様のサイン会かつ握手会があるから、あんまお金、使えないんだよねえ...」
「....は?」
サイン会?握手会...?
....俺とのデートは?
「んとね!CDとDVDに付いてる応募券でね、抽選があってー!とりあえず、3枚はハガキ出そうかなあって」
両手で頬杖をつき、ウキウキしている晶の満面な笑みに...呆れた。
「3枚、て...CDやDVD、何枚買うつもりだよ」
「え?3枚ずつに決まってんじゃん」
晶の笑顔が、馬鹿じゃないの、と言わんばかりの表情に打って変わる。
「...アイドルに恋してなんになんの」
「推しは大切!生きがいだもん!推し活くらいわかるでしょ、光だって」
「わかんない」
えーっ、信じらんない、と晶が声を張り上げた。
「好きになった芸能人とかいないの?」
「いない」
「夢中になっちゃった人とかは?あ、リアは抜きで。思わず、買い漁っちゃった、みたいなさ」
「買い漁った...」
宙を仰ぎ、思い起こす。
「...なくはないけど」
「でしょー!?光の推し、て誰ー?」
まるで恋バナか、な展開に俺も引き摺り込まれ始めた。
「...誰...。シンヤ、て人」
頬杖をついたまま、正面に座る晶が目を丸くする。
「シンヤ?なんのメンバー?俳優?」
「んー...とりあえず、お風呂、止めて来なきゃ」
「あ、逃げた」
慌てて、俺は浴室に走り、溢れかけていたお湯を捻る。
リビングに戻ると、
「おかえり」
と晶に笑顔で迎えられ、仕方がなく、テーブルを挟み正面に座った。
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