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第2話

たまに、ホント女か、て声で、キャー!だとか、 「やっぱり奏様、最高」 目をハートにさせてうっとりしてる晶を目の前に...気分が悪い。 せっかく作った料理も全然、箸進んでないし。 「...ご飯、冷めるよ、晶」 「んー、大丈夫。冷めても美味しいから、光の手料理」 テレビを向いたまま、晶がようやく箸を動かす。 食事に集中する気はないらしい。 俺はガツガツとそんな晶を見ず、飯をかき込んだ。 「ご馳走様!」 食器を重ね、立ち上がり、キッチンに向かった。 ようやく歌番組が終わり、はあ、と甘い息をつき、 「素敵だったあ...奏様」 「...まだ言ってんの。風呂、溜めよ」 風呂に浸かってビールでも飲もう。そうしよう。 風呂から戻ると、既に晶はビールを空けていた。 「...もう飲んでる」 「別にいいじゃん。てかさ、明後日、給料日だね!」 俺と晶は、以前、勤めていたダイニングバーの店長だった、同じくゲイである、類さんとその旦那のイタリア人のマフィが経営する、イタリアンレストランに勤めている。 だから、給料日も同じ、てわけ。 「だね。どうする?どっか行く?映画とか...あ、たまにはショッピングとか?」 思わず笑顔で前のめりになる俺。 「んー。奏様のサイン会かつ握手会があるから、あんまお金、使えないんだよねえ...」 「....は?」 サイン会?握手会...? ....俺とのデートは? 「んとね!CDとDVDに付いてる応募券でね、抽選があってー!とりあえず、3枚はハガキ出そうかなあって」 両手で頬杖をつき、ウキウキしている晶の満面な笑みに...呆れた。 「3枚、て...CDやDVD、何枚買うつもりだよ」 「え?3枚ずつに決まってんじゃん」 晶の笑顔が、馬鹿じゃないの、と言わんばかりの表情に打って変わる。 「...アイドルに恋してなんになんの」 「推しは大切!生きがいだもん!推し活くらいわかるでしょ、光だって」 「わかんない」 えーっ、信じらんない、と晶が声を張り上げた。 「好きになった芸能人とかいないの?」 「いない」 「夢中になっちゃった人とかは?あ、リアは抜きで。思わず、買い漁っちゃった、みたいなさ」 「買い漁った...」 宙を仰ぎ、思い起こす。 「...なくはないけど」 「でしょー!?光の推し、て誰ー?」 まるで恋バナか、な展開に俺も引き摺り込まれ始めた。 「...誰...。シンヤ、て人」 頬杖をついたまま、正面に座る晶が目を丸くする。 「シンヤ?なんのメンバー?俳優?」 「んー...とりあえず、お風呂、止めて来なきゃ」 「あ、逃げた」 慌てて、俺は浴室に走り、溢れかけていたお湯を捻る。 リビングに戻ると、 「おかえり」 と晶に笑顔で迎えられ、仕方がなく、テーブルを挟み正面に座った。

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