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第1話

大学の講義が終わり、空は橙色に染まっていた。 付き合い初めて半年になる彼女の美由も講義の為に園内にいる。 迎えに行く前に親友の透に呼び止められた。 「祥吾、ちょっといいかな」 立ち止まり、透の前で変わらず、笑顔を浮かべる。 背丈は殆ど変わらない。175くらい。 「どうした?今から美由と飯でも行こうかと思ってんだけど、お前も行くか?」 いつも通りの会話、な筈だった。 透はバツが悪そうな顔で頭を掻く。 「あー...その事なんだけどさ」 「透くん!」 透の背後から明るい声がした。 聞き慣れたその声は...。 「しょ、祥吾。居たんだ」 ...居たんだ? 居たら悪いのか? そもそも、なんで俺ではなく、透を嬉しそうに呼ぶんだ、と俺は思考がパンクしそうだった。 二人に連れられ、人気のない一角で言われた言葉に愕然とした。 透と美由は浮気していた。 いや、浮気じゃないか。 二人は俺が知らない間に交際していた、と言う...。 「...いつからだよ」 「...祥吾、こないだ、暫く、実家に帰ってたでしょ?その時に...」 「美由。美由はいいから。俺から話す」 ...美由? こないだまでは美由ちゃん、て呼んでたじゃないか。 「実家に帰ったの、先月だけど?」 「うん...美由、寂しがっててさ、俺も退屈だったし、2人で飲みに行って、それで...」 「...ヤった、て訳」 「まあ、最初は...でも、次第にさ。お互いに好き、ていうか...恋愛感情が止められなくなって...本当にごめん、祥吾。祥吾を裏切るつもりは無かった」 わなわなと体が震えた。 ひと月も前から、俺は騙されてた、て事か。 三人で一緒に飯に行く事だってあった。 二人はてんでいつもと変わらないように見えて...影でコソコソと俺にバレないよう付き合ってた、て訳か。 美由にとっては二股だ...。 「...殴れよ、祥吾」 「ちょ、透くん!」 慌てて、美由は透を庇う。 彼氏の俺ではなく...いや、違うか。 今は美由の彼氏は透なんだよな。 自嘲気味な笑顔が浮かんだ。 「ふざけんな。殴って何になる?お前らが俺を裏切ったことに変わりはないだろ。殴るのが馬鹿らしい。顔も見たくねーよ、二度と」 ...大好きだったのにな。 付き合い初めたきっかけは学園祭の準備だったっけ。 仲のいい友人から、互いに恋心を抱くようになり...。 全ての思い出を破り捨ててしまいたい。 俺は踵を返し、振り返ることなくその場を離れた。

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