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第1話
ある日、森の中で、触手を拾った。
学校をぐるりと取り巻く森を歩いていると、トントン、と脚を突かれているように思えたからだ。見た目は、さつまいもっぽかったが、もっと、ぬめっとしている。そこから、細い触手が伸びてきて、俺の脚をトントンと突いてきたのだった。
そして俺は、そいつを拾って帰った。それが、大間違いだったと気づいたのは、翌日の朝のことだったが……。
触手は、ゆるくうねうねしていた。気持ち悪い、とは思わなかったのは、最近、頭がおかしくなりそうなほど退屈だったからだ。
見た目はずんぐりしたさつまいも。そこから細長い触手が伸びたり縮んだり。それを観察しているだけでも、多少は退屈が紛れる。
いつもつるんでいる幼なじみがいるが、そいつが最近、別の友達とべったりになった。二人で何をしてるのか聞いたら、勉強とクラッシックの鑑賞会、ときた。
ハイソサエティな、坊っちゃんたちの集う場所として知られる、我が校ではあったが、こんなに退屈で、バカ真面目な勉強会になど参加したくはない。勉強は、授業と宿題だけで十分だ。
それで、最近、暇になった。
暇は良いが、この学校は森の中にあるので、遊びに行くとなると、最寄りの街まで山を下る必要と、外出許可が必要だった。
(あーあ、いつもだったら、啓司とゲームでもしてるんだけどなあ)
その啓司が、勉強に夢中なので仕方がない。確かにもう、十八歳。一応、成人はしているのだし、将来を見据えた動きもしなければならない年齢だろう。
(でもさー、どうせ、将来って決まってるんだし……学生のうちくらいは、好き勝手したいんだよ)
そして、他に一緒にいる友達も居らず、森の中を歩いていたら、触手に出会ったというわけだった。なぜ、そこに触手があったのかは、全く解らない。だが、もはや、理由などどうでも良かった。
とりあえず拾って、机の上に載せてみた。ゆっくりと、のったり動く。何らかの意志をもって動いている何かを観察していたほうがまだ、マシな気がした。
つん、とつつく。
ぷるん、と表面が震えた。それが面白くてツンツンしていると、怒ったのか細長い触手を伸ばしてきた。今度は、一本じゃなくて、五本くらい伸びてきた。
「おっ! すげー!」
ひとしきり触手に遊んでもらって、気が済んだ俺は、大人しく勉強に戻った。宿題に課題、予習に復習。やるべきことは山程あるのだ。
消灯時間まで勉強してから、シャワーを浴びて身支度を調える。
触手は相変わらず、机の上にいた。俺は、一度触手を突いてから、「じゃあ、おやすみ」とだけ触手に挨拶して、ベッドに潜り込む。
今日は、退屈しなかった。すぐに眠気が来て、意識が遠くなっていく。この、寝入りばなの瞬間が、好きだ。それを十分味わいながら眠りに落ちていった……。
異変があったのは、深夜のことだった。
身体が、もぞもぞする感じがした。なにかが、身体を這い回っているような……。
(え、もしかして虫?)
上掛けを干している時に、毛虫でも付いただろうか。飛び起きようとしたが、それができなかった。身体が、ベッドに押し付けられているように動けなかったからだ。
(な、なんだ!?)
パジャマの隙間から、何かが入り込む。ぬるっとした感触の、生暖かくて、細い何か……。それが、好き勝手に肌を探る。
「っ……、な、んだ。これっ……!」
振り払いたくても、それは俺の体を押さえつけているから、全く抵抗にならない。
「ちょっ……」
触手……だろう。あれは、机の上に置いたはずだった。長い触手を伸ばして、そのまま、ベッドまでたどり着いたのだろう。
(え、まって、これ、俺、捕食される……っ?)
朝になったら、この部屋はもぬけの殻で、俺がいた痕跡はあとかたもなく……。
男子高校生謎の失踪! ということで一時世間を賑わせるくらいか? まあ、そうなる前に、実家が、その情報を握りつぶすだろうけれども。
喰われる……、と思って身構えていた俺だったが、一向にその感覚は訪れない。
その代わりに身体中、好き勝手に触手が這い回っている。
そのうち、俺の中心に絡みついてきた。
「っ!!」
おもわず、息が詰まる。
びくっと体が震えた。自慢じゃないが、今まで他人が触れたことはない場所だ。それを、さわさわとパジャマの上から探られていたと思ったら、今度はいきなり、ぬるん、と下着の中に入り込み、直接、撫でてきた。
「あっ……っっ……っ!」
思わず、変な声が出る。やめろ、と抵抗しているが、勿論、体はつなぎ止められているので全く抵抗にならない。触手が、ゆっくりと、ソレを握って上下している。そう思っていたら、別の細い触手が、入り口をチロチロと刺激し始めた。
「っ……っ!!」
内腿が、ビクッと震える。
「あっ、……っや、っ……っなんで、ちょっ……っ」
先端から、先走りが漏れるのが分かる。触手は、それを気にせず、入り口を刺激して、そのまま、中へ侵入してきた。
「ひっ……っ!」
痛い、ような、変な感覚だった。体の中に、触手が入ってくる。触手が、中で、ぐるぐる蠢いている。腰が震えた。射精したいのに、入り口が止められているような、嫌な、感覚だった。
「あっ……っ、な、……っ……っぅっん……っ」
内側と外側と同時に刺激されて、気持ちが良すぎて、何も考えられなくなっている。頭の中が真っ白になって。目の前が、白く明滅していた。
「あっ、も……っ」
イく……と思った瞬間、先端から入り込んでいた触手がスルンと抜ける。その粘膜の内側を擦り上げながら抜けていく感触に意識が寸断する。超高層ビルの上から、ぽんっと落とされたみたいな酷い浮遊感に似た、意識の分断の仕方だった。
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