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第1話 唐突

ーー月曜日。 「君、高校生?」 「え…はい」 「大人っぽいね〜。背も高いし、落ち着いた雰囲気だし…都会生まれでしょ?」 「小さい頃は…」 背の高さって…関係あるのか? 「やっぱり!この辺りに住んでるの?」 「あ、はい。10年ぐらい住んでます。」 「そうなんだ。今は学校帰り?」 「はい…」 帰り道だったよな?あれ、でもここは…。 「学校は、バイトオッケー?」 「え?あ…たぶん。公立なので。」 「もしよければ、うちでバイトしてみない?未経験歓迎だよ。」 「はあ…」 何のバイトだろう。コーヒーのいい匂いがする。ここは…カフェだ。 「ここ、コンセプトカフェなんだ。外に看板あったでしょ?僕は店長。」 「ああ、そういえば。」 「君、かっこいいから制服も似合いそうだし。まあ、ゆっくり考えてみてよ。」 「はあ…」 「何か飲んでいく?」 「い、いいえ。」 「実は今日は定休日なんだけど、入り口の鍵開けっ放しだったかな。」 「え…す、すみません!勝手に…」 晃は急にこの状況を理解した。 定休日のカフェに、勝手に入り込んでしまっていたのだ。 でも、どうしてこの建物に入ったのか、思い出せなかった。 「大丈夫だよ。少しびっくりしたけどね!月曜以外は営業してるから、いつでもどうぞ。バイトしたくなったら、直接来てもらって良いけど、来る前に電話してね。」 店長だという男性から、お店のカードを受け取った。 「あ、はい…ありがとうございます。」 カラン。カフェから出て扉を閉めると、CLOSEDの札が見えた。 タタタ…。すると、誰かが駆け寄ってきた。 「先輩!急にいなくならないで下さい!」 「え」 「いつも何も言わずにいなくなるんだから!探し回るこっちの身にもなって下さい。」 「ご、ごめん。」 そうだ、後輩である宇月と一緒にいたんだった。 「あ、いや…いいんですけど。ただ、心配するんで、声だけはかけてって下さい。」 「うん」 「早く駅前のカフェ行きましょう。このカフェが良かったんですか?閉まってるみたいですけど…」 「今日は定休日みたいだ。」 「そうですか。課題やるんですよね?僕もあるので終わらせます。」 「課題か…」 宇月とそんな約束をしていた…気がする。宇月が言うのだから、間違いない。 その時、後方から声が聞こえた。 「晃じゃねぇ?久々。」 「!」 「久々だけど、変わりないか?」 「久々…」 「そうだよ、半年は会ってねぇだろ。」 以前見た時より、髪が少し伸びた。そういえば、最近会っていなかった。 「連絡してこねぇし。」 「連絡…してなかったか。ごめん。」 「いや、別にいいんだけどさ。」 そんな曖昧な会話をしていると、宇月が声をかけてきた。 「先輩。どなたですか…?」 「ああ、えっと。」 「晃の幼馴染の皆月だ。そっちは?」 「後輩の宇月です。よろしくお願いします。」 「よろしく。じゃあ行くわ。」 連絡、きていたのに返していなかった気がする。 「また、連絡する。」 「ああ、またな。」 「…先輩。幼馴染って、何歳の時からなんですか?」 去っていく幼馴染の背中を眺めていると、宇月が問いかけてきた。 「ええと…いつからだったかな。俺が、この町に越してきた頃からだから…。」 小さい頃から一緒だった。どうして最近会っていなかったんだろう。すごく仲が良かったのに…。なんだか、忘れていることが多い気がする。 晃は首を傾げた。 「…先輩!早くカフェに行きましょう。暗くなっちゃいますよ。」 「うん、そうだな。」 急足で、駅前のカフェへと向かった。 晃は、少し頭が痛かったが、あまり気にはしなかった。

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