2 / 27

第2話 無知

ーー火曜日。 朝から教室内が騒ついている。 晃の席は、窓際から2番目の1番後ろだ。 隣の窓際の席は空席だった。 ガラッ。担任と、見知らぬ生徒が教室に入ってきた。 「今日からこのクラスに転校生が入ります。二三月君、あの窓際の、1番後ろの席にかけて下さい。」 「…はい。」 転校生は、晃の隣の席についた。 「みなさん、二三月君に色々と教えてあげて下さい。二三月君、誰に聞けば良いのか分からない時は、隣の学級委員である彩月君に聞いて下さい。先生に用がある時は、職員室までお願いします。」 そうだ、昨日の放課後、転校生が入るから色々と教えるようにと担任から言われていた。 晃は、少しうつむいた転校生に声をかけた。 「学級委員の彩月晃だ。よろしく。」 「…よろしく。」 「名前を聞いてもいいか?」 なぜ、名乗らないんだろう。先生も、フルネームは言っていなかったと思う。 「! …二三月蓮。」 「蓮か。かっこいい名前だな。」 「どうも…。」 「分からないことがあれば、何でも聞いてくれ。」 「…ああ。」 キーンコーンカーンコーン。 午前の授業が終わり、昼休みのチャイムが鳴った。 「二三月、昼は持ってきてる?」 「いや」 「じゃあ買いに行こうか。購買があるから、案内するよ。」 「いや、いい。混んでるだろ。」 「昼休みだからな。」 「いつも昼はそんな食べてないから…いい。」 「そうなのか?でも午後は体育があるから、食べておいた方がいい。行こう。」 「……」 二三月は、渋々といった雰囲気で付いてきた。 購買に行くと、女子たちが何やらこっちを見て囁いている。 ヒソヒソ…。 「…?」 なんだろう、この雰囲気は。 「…なあ。もう少し空いてから…」 「でも、パンなくなるぞ。」 横から、少し大きな声が聞こえた。 「ねえ、ちょっと!1組に転入してきた蓮くんだよ!」 「ほんとだ〜!超かっこいい!」 「!!」 「? いつの間に、他のクラスで自己紹介したんだ?」 「……ハァ。」 二三月は気分が悪そうだった。 それを見て、晃は二三月の腕を掴んだ。 購買のスタッフに声をかける。 「すみません、焼きそばパンとたまごパン1個ずつで。」 「はい、どうぞ〜」 晃は素早くお金を払い、二三月の腕を引いて走り出した。 「ハァ、ハァ。な、なんで…」 息を切らしながら、2人は屋上へ続く階段まで辿り着いた。二三月の問いかけに、晃が答えた。 「気分が悪そうだったから…」 「じゃあ走るなよ…」 「それもそうか。ごめん。」 「いや…」 「人混み、苦手なのか?」 「人混みっていうか…みんながジロジロ見てくんのがキツい。」 「すごい人気だったな。転校初日なのに。」 「お前…テレビ見ないの?」 「うーん、あんまり。MHKのニュースぐらい。」 「そうか…よかった。」 「なにが?」 「いや…隣の席が、お前で。」 「? 光栄だ。」 「ふはっ。なんだよ、それ。」 二三月はそう言って笑った。なんだか、少し嬉しかった。 「パン、どっちがいい?初日だし、奢るよ。」 「え、いや、払うって。」 「転入祝い。」 「…ありがとう。たまごにする。」 「いいのか?焼きそばの方が野菜があるぞ。」 「いい。たまご、昔から好きなんだ。」 「へえ。美味いよな。」 ーー放課後。 宇月と一緒に下校することにした。 「先輩、今日の昼はどこにいたんですか?」 「屋上行く階段のところ。」 「いつも教室にいるのに。」 「転校生と一緒だった。」 「あ…あの芸能人ですか?みんな、噂してましたよ。先輩のクラスだったんですね。」 「芸能人?誰が?」 「転校生ですよ!二三月蓮って、最近すごいテレビ出てるじゃないですか。アイドルグループで。」 「そうなのか。だから、みんな知ってたんだな。」 「はは!知らないなんて、先輩らしい。」 もう少し、テレビを見てみようか…。 「それで、もう仲良くなったんですか?一緒に昼食べたんですよね?」 「ああ…隣の席なんだ。何も知らずに購買に案内したら、囲まれてしまって。パン買って逃げたんだ。」 「そうだったんですか…。これからは、二三月さんと昼ごはん食べるんですか?」 「いや、今日はたまたま。」 「そうですか!向こうは帰りはどうしたんですか?」 「そういえば、最後の授業を早退していたな。」 「仕事ですね、きっと。」 「そうかもな。」 学校で勉強してから、仕事に行って…芸能人は大変だな。この学校はバイトに関しては、制限はない。 晃は昨日のカフェを思い出した。 俺も、バイトをしてみようか…。

ともだちにシェアしよう!