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第2話 無知
ーー火曜日。
朝から教室内が騒ついている。
晃の席は、窓際から2番目の1番後ろだ。
隣の窓際の席は空席だった。
ガラッ。担任と、見知らぬ生徒が教室に入ってきた。
「今日からこのクラスに転校生が入ります。二三月君、あの窓際の、1番後ろの席にかけて下さい。」
「…はい。」
転校生は、晃の隣の席についた。
「みなさん、二三月君に色々と教えてあげて下さい。二三月君、誰に聞けば良いのか分からない時は、隣の学級委員である彩月君に聞いて下さい。先生に用がある時は、職員室までお願いします。」
そうだ、昨日の放課後、転校生が入るから色々と教えるようにと担任から言われていた。
晃は、少しうつむいた転校生に声をかけた。
「学級委員の彩月晃だ。よろしく。」
「…よろしく。」
「名前を聞いてもいいか?」
なぜ、名乗らないんだろう。先生も、フルネームは言っていなかったと思う。
「! …二三月蓮。」
「蓮か。かっこいい名前だな。」
「どうも…。」
「分からないことがあれば、何でも聞いてくれ。」
「…ああ。」
キーンコーンカーンコーン。
午前の授業が終わり、昼休みのチャイムが鳴った。
「二三月、昼は持ってきてる?」
「いや」
「じゃあ買いに行こうか。購買があるから、案内するよ。」
「いや、いい。混んでるだろ。」
「昼休みだからな。」
「いつも昼はそんな食べてないから…いい。」
「そうなのか?でも午後は体育があるから、食べておいた方がいい。行こう。」
「……」
二三月は、渋々といった雰囲気で付いてきた。
購買に行くと、女子たちが何やらこっちを見て囁いている。
ヒソヒソ…。
「…?」
なんだろう、この雰囲気は。
「…なあ。もう少し空いてから…」
「でも、パンなくなるぞ。」
横から、少し大きな声が聞こえた。
「ねえ、ちょっと!1組に転入してきた蓮くんだよ!」
「ほんとだ〜!超かっこいい!」
「!!」
「? いつの間に、他のクラスで自己紹介したんだ?」
「……ハァ。」
二三月は気分が悪そうだった。
それを見て、晃は二三月の腕を掴んだ。
購買のスタッフに声をかける。
「すみません、焼きそばパンとたまごパン1個ずつで。」
「はい、どうぞ〜」
晃は素早くお金を払い、二三月の腕を引いて走り出した。
「ハァ、ハァ。な、なんで…」
息を切らしながら、2人は屋上へ続く階段まで辿り着いた。二三月の問いかけに、晃が答えた。
「気分が悪そうだったから…」
「じゃあ走るなよ…」
「それもそうか。ごめん。」
「いや…」
「人混み、苦手なのか?」
「人混みっていうか…みんながジロジロ見てくんのがキツい。」
「すごい人気だったな。転校初日なのに。」
「お前…テレビ見ないの?」
「うーん、あんまり。MHKのニュースぐらい。」
「そうか…よかった。」
「なにが?」
「いや…隣の席が、お前で。」
「? 光栄だ。」
「ふはっ。なんだよ、それ。」
二三月はそう言って笑った。なんだか、少し嬉しかった。
「パン、どっちがいい?初日だし、奢るよ。」
「え、いや、払うって。」
「転入祝い。」
「…ありがとう。たまごにする。」
「いいのか?焼きそばの方が野菜があるぞ。」
「いい。たまご、昔から好きなんだ。」
「へえ。美味いよな。」
ーー放課後。
宇月と一緒に下校することにした。
「先輩、今日の昼はどこにいたんですか?」
「屋上行く階段のところ。」
「いつも教室にいるのに。」
「転校生と一緒だった。」
「あ…あの芸能人ですか?みんな、噂してましたよ。先輩のクラスだったんですね。」
「芸能人?誰が?」
「転校生ですよ!二三月蓮って、最近すごいテレビ出てるじゃないですか。アイドルグループで。」
「そうなのか。だから、みんな知ってたんだな。」
「はは!知らないなんて、先輩らしい。」
もう少し、テレビを見てみようか…。
「それで、もう仲良くなったんですか?一緒に昼食べたんですよね?」
「ああ…隣の席なんだ。何も知らずに購買に案内したら、囲まれてしまって。パン買って逃げたんだ。」
「そうだったんですか…。これからは、二三月さんと昼ごはん食べるんですか?」
「いや、今日はたまたま。」
「そうですか!向こうは帰りはどうしたんですか?」
「そういえば、最後の授業を早退していたな。」
「仕事ですね、きっと。」
「そうかもな。」
学校で勉強してから、仕事に行って…芸能人は大変だな。この学校はバイトに関しては、制限はない。
晃は昨日のカフェを思い出した。
俺も、バイトをしてみようか…。
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