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第22話
遅い。雪音と左京がこない。
前まではむしろ早めに来ていたのに、あの日以来、遅刻気味で出勤する日々が続いている。
朝っぱらから何をしてるんだか。
玄関で仁王立ちしていると、馬にまたがった左京と焔家の馬車がやってきた。
一時間遅刻とはいい度胸だ。
「おや、蒼、出迎えかい?」
雪音が、あくびを噛み殺しながら馬車から降りてきた。
馬から降りた左京が雪音の手をとって降りるのを手伝う。
狼を殺せる鬼にその助け必要ないだろ、と思いつつも、甘い雰囲気が漂っている現状、強くは言えない。
どうやら、昨晩は大いに盛り上がったらしい。
左京の首筋にしっかりと痣がついている。おそらく左京は悪戯されていることに気が付いていないのだろう。このまま執務室へ行けば、右近と要にからかわれるのは必須だ。
左京がからかわれてる所、俺もちょっと見たいと思うが、話さなければならないことがある。
「左京、あまえ、紅葉が犯人だってわかっていただろう?」
「・・・・」
図星なのか、左京が困った顔をする。
「あの日、雪音に毒が盛られたという秘密を俺にもらしたこと、草花の毒について俺が詳しいか確認したことを思うに、紅葉が雪音に毒をもるのを俺が阻止すると思って野放しにしていたんじゃないのか?」
「・・・はい。まさか、毒を口に含むとは思いませんでした。申し訳ない。紅葉が犯人かどうかは不確かだったので、糾弾できずにいたのです。それで、蒼姫ならと思いました」
「やっぱりな」
「この恩はいずれお返しいたしましょう」
「うん。それで、さっそくだが、提案があるんだ」
「は?」
困惑を深める左京と、何が起こるのかと興味津々の雪音を連れて、俺は執務室へ足を向けた。
🔷
「絶対ダメです。認めません」
家と執務室を結ぶ橋の上で、要が意地をはって口をへの字に曲げ続けている。
しかし、この機会を逃すわけにはいかない。
「良く考えろ。雪音が毒を盛られる可能性は今後もある。毒を知る必要があるんだ。俺だって巻き添えを食らうかもしれないし、この世界の植物を知ることは必要なことだ」
「蒼は大学へ行きたいだけでしょう?」
「学べる機関が大学しかないだけだ。俺は冬白国 へ行く。左京がお金は全部出してくれるから心配はない。な、左京?」
「も、もちろんです。毒の対策は必要ですゆえ」
要が左京をギロリと睨む。
左京に貸しを作った俺は、この世界の研究者が集う冬白国なら、毒についても学べるだろうと当たりをつけて、左京に留学の支援を願い出たのだ。
雪音も、毒の知識をつけることには賛成で、二人で短期留学することになった。
あとは、要を説得できれば成功だ。
「お陽はどうする?お陽も一緒に行くか?」
「あ、あの、わたすはその・・・」
「俺たちは産土様 のところへ行こうと思ってさ」
どもるお陽に変わって、にこにこ顔の右近が言う。こいつはいつも幸せそうだ。
「産土様?」
「そう。子作り旅行ってこと」
はっ、そうだった。この世界では子供は産土神の土地で授かるんだった。
木から生まれるんだっけ?本当なのか?
「要、春桃国 の視察も兼ねて、姫たちを送ってくればいいよ。その間は俺が一人で仕事なんとかするからさ。産土祭りも終わったし、雲京殿も口をつぐんでいる今がチャンスなんじゃない?新婚旅行も行ってないんだしさ」
「それはいいな!新婚旅行か。要、行こう!ほら、留学っていっても短い間だけだし、な、俺が万が一毒にやられて死んだら嫌だろう?」
「それはそうですけど・・・・。少し考えさせてください」
「なんだよ。いいだろう?」
「とりあえず、政務に戻ります。話は夜にしましょう」
「う・・・・」
夜か、嫌な予感しかしないな。
🔷
その日の夜。
要が襲ってくるに違いないと思い警戒していたのだが、その様子はなかった。
ただ・・・・
「はぁ」
要が大きなため息をつく。ひじ掛けにひじをつき、先ほどから何か考えているのか指をトントンと打ち付けている。その様子が異様に怖くて、俺はまるで死刑宣告でも受ける直前のような緊張を余儀なくされている。なんとなく、正座をして要から視線を外す姿は、きっと滑稽だろう。
「お役目はどうするんですか?」
「それなら問題はない。左京が焔一族専用の飛行船を飛ばしてくれる。片道四時間なら、週に一度帰ってくることができる。左京も雪音に帰って来てほしいみたいだし」
「飛行船か・・・」
「おまえ、俺が何もしらないと思ってるだろ?バカにするなよ。いろいろと俺だって調べてるんだ。大学、良さそうじゃないか。人間の世界と違って、学生ってよりは、仕事上必要な鬼が通うんだろう?」
「誰から聞いたんです?雪音さんですか?」
「いや、医者だよ。この間、毒をもられて念のため見てもらっただろう」
「あぁ、あの後も何度か診てもらいましたからね。その時か」
「あの医者、結構有名な医者なんだってな。大学通ってたって言ってた。普通はそこまでしないらしいけど」
「えぇ、大先生 をこの国で知らない鬼はいませんよ。医者を束ねている医師衆 の頭 です」
「その大先生が、要が許可してくれるなら毒に詳しい学者を紹介してくれるって」
「そこまで話が進んでたんですね。蒼をあなどってましたね。あなたは、自分のやりたいことになると、手をつけられなくなる。仕方ありません。止めても無駄でしょうし、許可しましょう」
「本当か!やった!」
「その代わり、住居などは俺が指定した場所にしてください。後、街歩きも禁止です」
「わ、わかったよ。行かせてもらえるなら我慢しよう」
「はぁ・・・・」
「そ、そんな悲しそうな顔しなくてもいいだろ。毎週会えるんだし」
シュンとしぼんだ姿は子犬のようだ。そういえば人間だった時は、こんな顔も良くみたが、今は閂という立場のせいか、凛とした強い表情でいることが多い。元は優しく笑うやつだったはずだ。こいつも苦労しているのかもしれない。と思うと、ちょっと申し訳ない気持ちがでてくる。
仕方ない。ここは少し、甘えさせてやろう。
「よしよし」
要の頭をなでる。
「蒼」
要がぎゅっと抱き着いてくる。可愛い要は久しぶりだ。
「毎日一緒にいたのは、俺だけですか?」
「や、それは、その、俺だって一緒にいたいとは思うけど」
「蒼は本当に俺のこと好きなんですか?」
「今さら何言ってるんだよ。付き合いたてのカップルでもあるまいし、何年一緒にいると思ってるんだ?」
「俺のことが好きなら、今日くらいお願い聞いてください」
「お願いって、いつも結局聞かされてるだろ」
「ちょっと待っててくださいね。渡そうと思っていた物があるんです」
要が奥の部屋からゴソゴソと、何かを持ってきた。
綺麗な包み紙に包まれている。
「姫が降りてきたと連絡したら、春桃国の姫から贈り物が届いたんです。渡しそびれていました」
「プレゼントか」
中を取り出す。布だろうか。広げてみる。
「な、なんだこれ・・・」
「下着ですね」
紐と小さな布で作られたパンツ、スケスケの布で織られたワンピースのようなものが中から出てき、た。
「せっかくですから、着てみてくださいよ」
「お、おまえ、中身が何か知ってて今渡しただろ!着ないぞ、俺はこんなの着ない!」
ん?下着から何かが落ちてきた。
手紙だろうか。
『まぐろちゃんのあなたへ
してもらってるばかりでは、ダメダメ!
まんねりにはご用心!これで彼の心を掴んでね♡』
慌てて手紙を握りつぶす。
それはまぁ、どちらかというと、してもらってるばかりではある。
まんねり・・・俺たちはまんねりなんだろうか。
まぐろって、俺は別に・・・・要がいつもがっつくから・・・・
「やっぱり、俺のことなんてその程度なんですよね。する時だって、いつも俺ばっかりだし」
「う・・・」
「はぁ・・・体目当てってやつですか」
「あっち向いてろ」
「え?」
要の顔がパッと明るくなる。
確信犯だ。わかっている。しかし、留学のためだ。要の機嫌をそこねるわけにはいかない。
「いいから、早くあっちむけ」
「わかりました」
どうやって履くんだ?こうか?
どこもかしこもスースーするな。
「いいぞ」
「わぁ、蒼!可愛いです」
恥ずかしさのあまり顔をあげることができない。
「蒼、こっち、来てください」
「ん?なんで奥の部屋?」
手を引かれて寝室の奥の部屋へ移動する。
奥の部屋は衣類が置いてある、人の世で言うウォークインクローゼットだ。
「ちょ、何して・・・おまえ!」
「ほら、良くみえるでしょう」
要に後ろから抱きしめられる。
目の前に姿見があった。こんなの今朝はなかった。確信犯すぎるだろっ!
「あぁ、興奮しますね」
膝の上に座らされ、足を広げられる。
「蒼、もう大きくなりましたね」
大きくなったソレが前の部分しかない布を押し上げる。
パンツ全体が前に引っ張られて、後ろの紐がぐいと食い込む。
「蒼は恥ずかしいのが好きですねぇ、ほら、乳首もツンとしてきましたよ。ピンクの布に透けて、可愛いです」
「あっ」
クリっと摘ままれると体が後ろへのけぞった。
「んっ」
顔を後ろへ向かされて口づけされる。
ねっとりとした要の舌が容赦なく口内を犯してくる。
「あぁ、こっちももうこんなにトロトロになってる。紐パンいいですね。履いたまま入れられそう」
「ああっ・・・んっ・・・あっ」
クチュクチュといういやらしい音が狭い部屋に響く。
「蒼、鏡見てください。こんないやらしい格好で、俺をねだってますよ」
「ああん・・・あっ・・・やっ」
「ほら、もっと足を広げて、穴も良く見せてください。俺の指が入ってるの、見えますか?」
「要・・・もう・・・あっ」
「ん?指じゃなくて、俺が入ってるところが見たいのかな?」
「そんな・・・あっ・・・あっ・・・イキそう」
「いいですよ。一回いかせてあげます」
要が布をすっと横へずらす、そのこすれる感覚で、アレからキラキラした霧が舞い上がる。
「星空よりも絶景です」
「バカ」
恥ずかしさに顔を要の首にうずめる。
「ダメですよ、ちゃんと鏡みないと、次は俺のをお尻で咥えている蒼を見せてあげますから」
「やっ」
腰を持ち上げられると、すぐに要のアレが入ってくる。
「ああん・・・やだ・・・見える・・・見えるから」
「良く見て、俺に犯されてる所、ほら、動きますよ」
「あっ・・・ああん・・・ひゃぁ」
体を持ち上げては下げられる。奥にまっすぐ届く。
抜き差しされている部分が鏡に映っている。そこから漏れ出た透明の液が灯りに反射する。
「出しますよ。見て、俺の液が中に出るところ」
要が良く見えるように、さらに俺の尻をもちあげる。
「くっ・・・蒼・・・中いい」
「はっ・・・あっ・・・ああああ!」
グチュ、ドロ、穴から要の液が漏れてくる。
「まだです。続けます。今日は、この姿勢だけで、俺のをどれだけ搾り取れるかやってみましょう」
「ま、まって・・ああん」
こんなのあんまりだ。こんな、こんな、いやらしい姿。
ズブズブ入ってくる要に、俺はもうそれ以上何も考えられなくなった。
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