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第24話

カフェはお洒落でテラス席もあった。コーヒーも久しぶりに飲んだ気がする。 夏青国にもコーヒーはあるけど、出す店は少ない。ほとんどがお抹茶だ。 雪音はチョコレートはそれほどお気に召さなかったらしいが、俺はたっぷりと担当した。まだ口の中がチョコレーの味がする。要への土産も買ったし、そろそろ戻ろうかと思ったら、華さんがどうしても最後に連れて行きたい店があるというので付いてきた。 忘れていた、この人が変態だってことを。 「こんな下着があるんだねぇ」 雪音が紐パンをひらひらと持ち上げて見ている。 「蒼さん、プレゼントはどうでした?盛り上がりましたか?」 「え?あ・・・はい。ありがとうございました」 顔を覗き込んでくる華の視線を避けるように首を斜め後ろへ向ける。 「おや、蒼はもってるのかい?この店の下着」 雪音がにやにやしている。 「新作買っていきましょうよ。これ、素敵じゃないですか?」 華がマネキンをじっくりと見ている。 一見ビキニのように見えるが、生地が透けている。 しかも、下の方はミニスカートのような作りで、中身がない。 「これはまた・・・・めくったら丸見えだね」 雪音がスカートをめくって笑いをこらえる。 「僕はピンクにするので、蒼さんは薄紫でいいですか?すいません~これください~」 「ちょ、勝手に頼まないでくださいよ」 華が俺を無視して店員とやりとりする。 「雪音、おまえも何か買え」 クスクス笑い続けている雪音に腹が立つ。こうなったらこいつにも何かおしつけよう。 「私は、向こうにあるのが欲しいな」 「え?何か欲しい物あったの?」 雪音が向かったのはまた違う趣向のコーナーだった。 紐、鞭、玉・・・・いや・・・これは・・・・SMグッズなのでは? 「この紐、すごく質がいいんだよ。これで罪人みたいに左京を縛ってみたいね」 「お前たちってそういう感じなんだ・・・・」 結局、俺はビキニみたいな下着を買わされ、雪音は紐を買っていた。 俺の下着よりも雪音の紐がどう使われるのか正直気になるところだ。 春桃国のショッピング兼観光を楽しみ、俺たちは帰路に就いた。 そろそろ日が暮れる。政務も終わっているだろう。 🔷 閂の家に帰ると、リビングで宴会が開かれていた。 「ただいま・・・・・」 俺達三人は予想していなかった光景を前に、棒立ちになっている。 可愛らしい鬼達が要達を囲んできゃあきゃあ騒いでいた。 腕が絡んでいる。見知らぬ鬼が要に抱き着いている。 左京の頬には、くっきりと口づけの跡が紅色に残っている。 啓介にいたっては満面の笑みで両腕に鬼を抱いているではないか。 「啓ちゃん!また、メス遊びしてる!浮気はダメだって言ってるでしょ!バカバカ」 華がわめく。 「お、おかえり。別に浮気なんかしてねぇだろ。接待を受けてるんだよ。要達が来るって聞いて、金城(きんじょう)の旦那が美鬼を寄越してきたんだ。無下にもできないだろう?」 「もう~金城さんは、いつも余計なことばっかりするんだよね。みなさん、ご苦労様でした。これにてお開きですからね。お帰りください」 華がそう言うと、色気たっぷりの可愛らしい鬼達はしぶしぶといった感じで館を後にした。 「蒼・・・あの、断れなくて・・・」 要が気まずそうにこちらへよってくる。 「近づくな!くさい!香水の匂いがくさい!」 「怒らないでください」 「怒ってない。くさいって言ってるだけだ。まだお腹すいてないし、少し部屋で休ませてもらう」 リビングの扉を勢いよく開けて出ていく。 俺は断じて怒ってなんていない。要が浮気するなんて考えられないし、接待と言っていたから仕方がないのだろう。でも、なんだかムカムカして気持ちが悪い。ベタベタと触られやがって。 部屋へ入ってドカッとベッドにダイブする。 怒ってなんていないんだ。 顔をクッションにうずめると、要に抱き着いていた鬼の顔が浮かんだ。潤んだ瞳、厚い唇。長い髪。 可愛かったな。夏青国にも高級クラブのような店があると聞いた。オス型をもてなすような職業が存在するということだ。あの鬼達もプロなのだろう。あんなに可愛らしい鬼に甘えられたら悪い気はしない。俺だって元は男なのだからわかる。啓介さんは好きそうだったが、要はどうなのだろう。人だった時の記憶にも、要が女性相手の店に行く姿はみたことがない。たまにはチヤホヤされたかったりするんだろうか。 「はぁ」 ベッドが沈む。要の気配を隣に感じる。 「蒼?」 「なんだよ」 「どうでしたか?観光は」 「楽しかったよ。そこにチョコレートのお土産あるだろ?」 「あ、これですね。ん?これもお土産ですか?」 クッションから顔をあげると、要が例の下着をにやにやしながら持っている。 「それは、華さんが勝手に押し付けてきたやつ。着ないからな」 「そんなぁ、着てくださいよ。この間のよりいやらしいですね」 「俺なんかより、さっきの可愛い鬼の方が似合うだろう」 「ふふ、蒼、やきもち妬いてくれるんですか?」 要がこちらへやってきて俺の体を後ろから抱きしめる。 「うるさいなぁ。いいからシャワー浴びて来いよ。香水の匂いがするのは本当だ」 「はい、俺も嫌だったんで、浴びてきますね。これ着て待っててください」 「だから着ないって。そういえば、雪音たちはどうした?」 「雪音さんも蒼のすぐ後に部屋を出て行って、左京が慌てて追いかけてましたよ」 「雪音も怒ったりするのかなぁ。あ、今頃縛られてるかもな」 「縛る?」 「雪音のやつ、下着ショップで紐買ってたんだよ。罪人みたいに左京をしばるんだって」 「それは・・・おもしろそうですね。こんど感想を聞いてみましょう」 「そんなことしたら切りつけられるからやめておけ」 「あ、俺も蒼になら縛られてもいいですよ」 「やめろ、俺はそういうプレイに興味はない。もういいから、シャワーいってこい」 「じゃ、俺たちは夕飯前にえっちな下着プレイにしましょうね~」 もうこの下着捨ててやろうか。 まぁ、左京の方が大変な目にあってそうだし、下着くらいいい気がしてきたな。 どうしてるかな、左京と雪音。

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