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第50話

結局、次の日も要は仕事へ出かけていき、もう暗くなってきたというのにまだ帰ってきていない。 俺は、夕食を食べた後、どうにもいられず、庭にある藤棚の下に寝転んだ。 藤の花のつぼみが膨らんできた。あと一週間もすれば咲き始めるだろう。 「姫様、要様より便りですよ」 梅がわざわざ庭に出てきて便りを手渡してくれた。気を使ってくれているのだろう。 「お忙しいようですねぇ」 「あぁ、ありがとう」 梅が行ってしまうと、嫌々手紙を開ける。 蒼へ 帰れなくてすいません。お役目はお休みしたいと思います。 問題ないので心配しないでください。 そろそろ藤の花が咲くでしょうか? 藤の花の見ごろが、姫達の講師の任期が終わる頃と重なると月姫に話したら、ぜひ花見の会をやろうと言われました。美しい藤を秋紫国にも植えたいそうです。閂も揃う予定なので、宴にもいいと思います。また、蒼に衣装を作ってくれるそうですよ、楽しみです。それまではまだ忙しいですが、終わればゆっくりできると思います。風邪などひかないように、暑くても薄い肌掛けくらいはお腹にかけて寝てくださいね。 要より 読み終わってどかっと再び寝転がると、藤棚の間から月が見えた。 任期か、それもあって忙しいのかと気が付く。 月姫も誠姫も、弟子ができたので講義を外れる予定だ。それと同時に雪音と俺も学校から離れることになっている。さすがに姫がずっと働いているというわけにはいかないのだろう。雪音が講師をやっていることも、左京はよく思っていないので、仕方がない。薬学は大先生が薬師組合の頭を引退してみてくれることになっている。俺は、空いた時間、自分の研究に専念できるし、ありがたい話だ。 それなのに、なんだか、何もかも無くなってしまうような気がして寂しさが残る。 要と出会う前の俺なら、人恋しさなどとは無縁で、ありがたく自分のやりたいことに専念しただろう。 けれども、今は、変わってしまった。誰かといる楽しさも、かかわりあう楽しさも知ってしまった。それと同時に寂しさも知ってしまったのだ。こんな俺にしたのなら、せめて要は俺のそばにいる責任があるのではないのか?それなのに、あいつは安心しきって放置プレイだ。 「はぁ」 知らずに大きなため息がでる。 目線の先、まだつぼみの藤の花の向こうに、白く美しい月が見えた。 目の前の藤に飽きて、遠く輝く美しい月に惹かれてしまったのだろうか。 手に入ったから興味がなくなったとか? 冥府の地まで追いかけて、愛が深まったと思っていたのは俺だけだったのだろうか。 俺を追いかけて人にまでなって、捕まえたからもう終わりなのだろうか。 女王の氷はいつのまにか溶かされてしまった。 夏の王子にあてられて、すっかり溶けて、そのせいであふれ出る。 俺は流れる涙をぬぐいもせず、ただ夜空を見上げた。 溶けた氷よりも、あふれ出る量が多いのは、俺の中にも暖かいものが生まれたせいだろう。 誰かを愛する気持ちは暖かい。それが今は、俺のなかにもあるのがわかる。 俺は、お前のために咲いていたんだ。 俺は、お前の気を引きたくて風になびいて揺れていたんだ。 月なんかのためじゃない。 しばらくじっと夜の闇に身を埋め、俺はトボトボと一人で寝屋に戻った。 🔷 泊まり込みの日が増えて、要ともうどれくらい言葉を交わしていないのかわからなくなってきた。 俺は淡々と日々を過ごし、じっとサツマイモが花を咲かせるのを待ち続けた。 そうこうしているうちに、姫達の講師の任期が終わり、閂たちが迎えにやってきた。誠と過ごすのも今日が最後だ。 最後の講義を終えると、俺は家に帰り、宴の準備に追われた。 要は他の閂と朝からずっと会議をしているらしく、まだ顔をみていない。 そろそろ茜がさしてきたから、宴が始まるというのに、仕事熱心なのもどうかと思う。 「これは、また一級品の織物だねぇ」 一緒に準備をしてくれている雪音が、俺に衣装を着つけながら感嘆のため息をもらす。 月姫が自国から取り寄せて仕立ててくれた物だ。それはさぞすばらしい品なのだろう。 「なんだいその顔は。恋敵が作ってくれた着物が嫌なのかい?子供だねぇ」 「恋敵じゃない。友人だ」 「友人に対してする顔じゃないよ」 「派手な衣装が嫌なだけだ」 「はいはい、わかったから。しっかり着こなしておくれ。この衣装を着れば、いつも土だらけの蒼先生が姫だってみんな思い出すよ」 今日は閂の屋敷を解放するらしく、出入りは自由だ。もちろん外は鬼兵隊が警備している。講義を受けていた学生たちも藤を見にくるので、すごい混雑するだろう。他にも見にきたい鬼達は山のようにいるらしく、時間指定のチケットが配られたらしい。ずいぶん大業なイベントになってしまった。 それもあって、俺は朝からめんどくさい気持ちでいっぱいで、不機嫌なのだ。 「めんどうだなぁ」 「仕方ないさ。たまには姫の務めを果たしなよ。いつもフラフラ好き勝手やってるんだからさ。そういえば、お陽も子供連れてくるってさ」 「そうか。久しぶりだな。それは嬉しい知らせだ。暖吉(だんきち)大きくなったかなぁ。右近に似てきたよな」 「お(うみ)も走り回るようになったし、今が一番手がかかる時期だろうね」 「お海はお陽に似てるよな。ぽちゃっとして可愛い。だっこするとかなり重いけど・・・」 🔷 宴が始まって、庭は鬼でごったがえしている。 俺は誠姫と華姫と上座に並んで、挨拶に来る鬼に嫌々笑顔を振りまいている。 華姫も、今日は閂と一緒に遊びにきており、子供たちも一緒なので、さっきからわいわい上座もにぎやかだ。 月姫はいない。要達と一緒なのだろう。 しばらくすると、閂たちがやってきた。華の子供達が「父上~」と啓介の元へ走りよる。 月姫の番である(ただし)もやってきたというのに、月姫と要だけがこない。 しばし我慢していたが、俺はとうとう我慢できなくなって、お手洗いだと言い訳をして、母屋へ足を向けた。 馬車乗り場へ向かうために、母屋を通り過ぎようとすると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。 寝所の方だ。なぜ、月姫の声が寝所から聞こえてくるのだろう。 俺は冷える心臓に見て見ぬふりをしながら、おそるおそる寝所へ向かった。 「ん、ちょっと膝まげてくれる?届かないわ」 「あ、はい。このくらいですか?」 やっぱり、月姫と要の声だ。 意識していないのに忍び足になる。 おれはそっと、御簾の向こうの部屋の中をのぞいた。 ガタン 思わずよろけて、衝立にぶつかる。 その瞬間、こちらを向いた要と目が合った。 「蒼?」 呼ばれた名を聞く前に、俺は山へ向かって駆けだした。 何をしていた? 走りながらさっき見た光景を反芻する。 上半身裸の二人、月姫が要の首を抱くようにしていた。 政務?そんなわけはない。 じゃあなんだ?どんな理由で裸で抱き合うことがある? わからない。 何してるんだよ、要! 俺はがむしゃらに社へ向かう階段を走って上り。社へ着くと道を逸れて山の奥深くへ入っていった。 走って走って、息が切れるのもおかまないなく走り続けた。 ようやく止まったのは、足袋の鼻緒が切れてつまずいたからだ。 「はぁはぁはぁ」 胸が苦しい。息がうまくできない。 しばらく倒れたまま休み、おずおずと体を起こす。 鼻緒が切れてしまった足袋を拾おうとすると、少し向こうから光が漏れているのが見えた。 仙花だ。 こんな状況でも俺は新しい仙花への興味を覚えて、ゆっくりとそちらへ向かった。 「はぁはぁはぁ・・・」 目の前で光り輝く藤の花に、言葉も忘れて魅入る。 美しい。今まで見たどの仙花よりも美しい。 おぼろげに七色に輝く藤の花に惹かれて近づいてゆく。 俺が真下へくると、長く垂れた藤の花が風も無いのにゆらゆらと揺れた。 そっと手で触れると、暖かい熱を感じた。植物にはない、まるで生き物のような鼓動を感じる。 あぁ、藤に戻ればこんなつらい思いなどしなくて済む。 ただ風に揺られ、美しく咲けばいい。 戻ってこい。そんな声が聞こえた。 戻って来い。藤が呼んでいる。 戻って来い。俺を呼んでいる。 光り輝く藤の花に意識が吸い込まれていくのを感じていると、突然パチンと雷のような音が響き、視界が暗転した。 「何してるんですか!」 要の声だ。 「俺から離れるなんて許しませんよ!」 怒っている。息が荒い。 「どうしてあなたは、じっとしていてくれないんですか!」 後ろから力強く抱きしめられて体が痛い。 そんなに力を籠められたら、体が折れてしまう。 「痛っ」 目を開けると、美しい藤はそのままで、俺は崩れ落ちる体を要に抱き留められていた。 見上げると、怒ったような悲しいような表情をした要の顔があった。 息があがっているらしく、胸が激しく上下している。 むき出しの肌は、木々にやられたのだろう、すり傷が所々にあった。 「何、してるんですか・・・」 要が泣こうとするので、泣きたいのはこっちだということを思い出した。 「それはこっちのセリフだろ。お前、月姫と何してたんだよ。裸で抱き合って・・・」 自分で言って、その事実に怯える。 「抱き合って?何いってるんですか?俺の衣装が少しきつかったんで、月姫が自分の肌着の布を割いて付け足してくれてたんですよ。急いでたのであんな形にはなりましたけど。人間だった時より肩幅が広くなっているので、月姫の知っている寸法と違ってしまったんです」 「は?」 「首の後ろを切って当て布をすれば、間に合うらしくて、布の長さを図ってたんです」 「え?じゃぁ、浮気してたわけじゃないのか?」 「俺と月姫がですか?ありえないですよ。どうしてそんな考えに至るのかまったく意味がわかりません」 「でも・・・、いや、だって、お前、全然家に帰ってこないし、しょっちゅう月姫の香水の香りがするし、思うだろう普通、俺に飽きて月姫に気持ちが向いたのかなって」 「意味がわかりません」 「意味がわからないって・・・お前、ちょっと、無神経すぎるだろ!」 「蒼に無神経だと言われる日がくるとは思いませんでしたね。それよりも、今、藤の花に戻ろうとしてましたよね?」 「え?いや、良くわかんないけど、呼ばれた気がして・・・」 「良く分からずに、俺を捨てようとしたわけですか?」 「だから、よくわかんないって」 「逃げ出したりしないで、怒ったのならその場で言ってくださいよ。どうして逃げるんですか?冥府の地へ来てくれて、安心していたのに・・・。こんなことで藤に戻ろうとするなんて・・・。やっぱり牢に入れておかないといけないかもしれませんね」 「いや、待てって、藤に戻ろうなんて思ったわけじゃなくて・・・」 「逃げましたよね?」 「それは・・・だって、どうしろって言うんだよ」 「浮気するなって、怒鳴ったらよかったじゃないですか。月姫に取られたと思ったら取り返したらいいじゃないですか。俺だったらその場で相手を殺しますよ」 「そんなの無理だろ・・・」 「どうしたら欲しいって思ってくれるんですか?少し期待してたんです。家にも帰ってないし、蒼が怒って役場に迎えにきてくれるんじゃないかって。役場まで来ないにしても、寂しいって手紙くれるとか。でも、何もなかったです」 「ふざけるな。仕事だろうから、我慢してたんだ。俺だって会いたかったに決まってるだろ」 火照った要の胸板に顔をうずめると胸が締め付けられるような気がした。 大きくて広い胸板が安心する。ずいぶん久しぶりの要の肌の感触だ。 「蒼・・・」 「んっ」 久しぶりの口づけは、濃厚で甘美でとろけてしまいそうだ。 もっとしてほしくて、無意識に要に抱き着く。 「んっ・・・はっ・・・んっ」 何度も確かめるように口づけする。 「蒼、もっとねだってください。俺が欲しいって、俺にしてほしいこと言ってください」 「お前が・・・欲しいよ」 「他には?」 「他?・・・ん、毎日家に帰ってきてほしい」 「それだけ?食事は一緒にしてほしいとか、迎えにきてほしいとか、一緒に寝てほしいとか」 「いや・・・別に必ず飯を一緒に食べる必要はないと思うし、仕事が忙しいなら仕方ないと思うから・・・」 「はぁ・・・・。仕方ないですね。蒼がストレートに欲しがってくれるのはこっちですよね」 「ちょ・・・やめっ・・こんな所で・・・みんな待ってるし」 「ガチガチなのに?」 「ガチガチなのはお前のほうだろ」 「んっ・・ダメ・・・すぐ出ちゃうから」 理性が体をまさぐり始めた要を追い返そうとするものの、止めないでほしいと思う本能に負けていく。 「あっ・・だめっ・・あっ」 「俺も、もう入れたいです」 せっかく着せてもらった衣装を要がほどいていく。片足を持ち上げられて、立ったままのかっこうで要が入ってくる 「はっ・・・ああっ」 入れられた瞬間、俺から輝く霧が放たれる。 少し動いただけで、要からもドロっとした液が流れ出た。 「我慢しすぎましたね」 「あっ・・・もう・・・帰ろう」 「本当に?これで終わりでいいんですか?」 「あっ・・・ああっ」 再び入ってきた要に腰が浮く。 要が俺を抱き上げて、俺はだっこされた形になる。 串刺しになった状態で、要のアレが奥へと深く入ってくる。 「ああああっ」 思わずのけぞって落ちそうになった俺を何かが支えた。 ノーマークだった乳首を両方ぐいと摘ままれて、「ひっ」と声がもれる。 黒い影の腕がそのまま俺の背を支えて、乳首を弄ぶ。 そうだった。仙花のそばでは要がいても影が出てこれるんだった。 「やっ・・あっ・・・はっ・・・あっ」 快感に悶える。全身が感じておかしくなりそうだ。 ふいに、尻に固いものがあたった。 「だ、だめっ・・・無理っ」 小さな悲鳴をあげるものの、二本目のそれが容赦なく入ってくる。 「ああっ・・・んっ・・・ひっ・・・んっ」 要に口づけられて声が出せなくなる。 舌をからめとられ、息ができない。乳首の先端をクリクリと弄られて胸がのけ反る。 俺の固くなったアレを要が手でコスる。腹の中は要でいっぱいだ。 全身を責められてもう快感以外何も感じられない。 「蒼、俺がほしい?中に欲しい?」 「あ・・・ほ、ほしい、中に欲しい・・・ああっ・・・ああああああ!」 体を上下に激しくゆすられる。 「他には?他にもねだってくださいよ」 「ひゃっ・・あっ・・・他・・・あっ・・・」 「ほら、ゆっくりにしてあげましたから、言えるでしょう?」 動きが緩慢になる。イキそうでいけない。要が俺の額、目元、頬に口づけを落とす。 「あっ・・・全部・・・ほしい・・・体も・・・心も全部」 「ん・・・いいですよ。全部あげますよ。他には?」 「香り・・・つけるな・・・はぁはぁ・・・俺以外の香り・・・やだ」 「わかりました」 「んっ・・・・俺だけ、触って良いのは、俺だけ」 「はい。俺の体も心も全部蒼のものですからね」 「ひっ・・・ああああっ」 優しい口づけが終わると一気に攻め立てられる。 要と影と両方の刺激に意識がもっていかれそうになる。 「あっ・・・いくっ」 「俺もです」 奥まで突き上げられて、要の液で腹が満たされる。 どろっとした感触が足に表れて、終息が知らされる。 「仕方ありません。そろそろ戻らないとですね」 優しく笑う要に、俺はぐったりともたれかかった。 このまま眠ってしまいたい・・・・。 🔷 「あんたたち・・・植物学者だからって、山ですることないでしょう?」 と嫌みを言われつつ、月姫に乱れた衣類を直してもらい、俺と要は宴の席へ戻った。 要の服は本当に肩幅がきつかったらしく、月姫が首の後ろに布を付け加えてどうにかなった。 俺の早とちりだったわけだが、上半身裸で抱き合うようにしていた二人が悪いので、衣装を直してもらっている間、「ほらね?」という顔を俺に向けてくる要のことは無視した。 宴席の上座に行くと、閂と姫が勢ぞろいしていて、とても華やかというかうるさいことになっていた。 「仲直りできて良かったですね」 と誠が微笑んでくる。雪音がクスクス笑っているので、おそらく俺達の話は筒抜けになっているのだろう。 「蒼さんでも、やきもち妬くんですね」 啓介に子供を預け、解放された華が食事を口に運びながら言う。 「まぁ・・・それなりには」 俺も、安心したら急に腹がへってきて、出された食事をつつく。 「でも、要君よかったね。明日からは子作り参りでずっと一緒だし、子どもができたら、蒼さん家にしばっておけるしね」 「は?子作り参り?」 でたな、俺は何も聞いてない。要を睨みつけると、「あはっ」と視線を逸らされる。 「えぇ?言ってないの?そのためにずっと忙しくしてたんでしょう?長い休みとるって。」 「そうなのか?なんで言わないんだよ!」 「いや・・だって、あんまり乗り気じゃないみたいだったんで」 要がおずおずと答える。視線は相変わらずあらぬ方向を見ている。 「おい、こっちを見ろ!夜叉族の子孫が必要なのは、俺だって承知してるって言っただろ!」 「まぁまぁ、怒らないであげてよ。蒼さんが大学通い始めるって春桃国へ寄った時、要君、本当はすごくつらくって悩んでたんですよ。蒼さんがすぐに自分から離れていくって。だから僕が、子供ができれば、蒼さんは家にいないといけないから、子供作るといいよってお勧めしたんだよね。要君、それまでは子供はいらないって言ってたけど、僕としては要君と蒼さんには子供作ってほしかったし。せっかく子供作れるんだもん、作らなくちゃソンソン」 いや、待て・・・何かがおかしい。子供って夜叉族の子孫を残さないといけないから作るんだったはず。しかし、華が言っているのは・・・・ん?何かがかみ合っていない。 「かなめ・・・お前・・・・子供作るって言いだしたの、夜叉族の子孫を残すためじゃなくて、俺を家に縛り付けるためか!」 「え・・あ・・いや・・・えっと」 要がうろたえる。目が泳いでいる。 「ほら、子は鎖・・・じゃなくて、(かすがい)って言うじゃないですか」 「いや、お前、明らかに鎖って言っただろ・・・」 「えっと、夜叉族の子孫は必要ですし」 「いや、お前、俺さえいれば本当は夜叉族なんてどうでもいいって思ってるだろ」 「・・・・・」 「怖いよ!俺を家に閉じ込めておくことじゃなくて、世界の存亡の危機の方を優先しろよ!」 「どっちでもいいじゃないですか。することは同じだし」 「やめろ。そんな言い方するな!」 「蒼、愛してます」 後ろから抱きしめてくる要を睨みつける。 「あと、もう一つ言ってなかったんですが、産土の地にある子作りする木の(うろ)あるじゃないですか。あの中って特殊な空間で、食事も睡眠もしなくて大丈夫なんです。だから、蒼が発情期でいる五日間、ずっとしっぱなしなんですよ。興奮しますよね」 「ひっ。怖いわ!」 ありえない。こいつは本当にありえない。 死んだって要からは逃げられない。 永遠に続く快楽と深い愛。 俺はやっぱりお前が一番怖い! ****************************************** これにて、蒼と要の物語は終了となります。 ここまでお付き合いくださった皆様、ありがとうございました。 ******************************************

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