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第71話

「このままくっついていたいけど、この始末はしとかないとな」  耀くんが下を向いて、急に恥ずかしさが戻ってきた。 「あ、う、うん…っ」  この体勢もめちゃくちゃ恥ずかしい。  脚を閉じようにも耀くんを跨いでるから閉じられない。  恥ずかしいから下腹部を手で隠した。 「碧、また顔真っ赤んなってる。可愛い」  耀くんがそう言って笑って、僕の頬に軽くキスをして僕を膝に乗せたまま少し動いてティッシュの箱を手に取った。  僕のお腹とかを拭いてくれたけど、膝から下ろしてはくれない。 「あの、耀くん。これ、恥ずかしい…っ」  訴えても耀くんは僕を抱きしめたまま離してくれなくて。 「うん。ごめん碧。もうちょっとこのまま…。もう今日はこれ以上はしないから…」  『今日は』  まだ続きがあるんだ…  僕を抱きしめる耀くんを、僕もぎゅっと抱きしめ返した。 「可愛いなぁ、碧。やばい、可愛すぎて」  ようやく僕から片手を離した耀くんが、手を伸ばして僕のTシャツを拾った。前後を確かめて、スポッと頭から被せられる。 「これ以上お前の裸見てたら止まんなくなる」  オーバーサイズのTシャツは、僕の身体を腰まですっぽり隠した。  耀くんに両脇を支えられて、やっと膝の上から下りた。  まだちょっと脚に力が入りにくい。 「その格好もめちゃくちゃ可愛くてそそるから早く下履いてね」  手早くジッパーを上げながら耀くんがちらりと僕を見た。  そ、そそるってなに  僕は慌ててハーフパンツを掴んだ。  僕が服を整えてる間に、下だけ履いた耀くんが一度部屋を出て、タオルを持って戻ってきた。 「碧、ちょっとこっちおいで」  ベッドに腰掛けた耀くんに呼ばれて近付くと、くいと手を引かれて膝の上に座らされた。今度は耀くんに背を向ける方向。 「まずは手」  持ってきた濡れタオルで丁寧に手を拭いてくれる。小さい頃に手を洗った時とか、おやつの時にこうやって手を拭いてもらったのを思い出して気恥ずかしい。 「それからお腹、ね」  ちょっとごめんね、とTシャツを捲られた。 「タオル冷たい」 「はは、ごめんごめん。夏だし、いいかと思ったけど」  僕の身体を丁寧に拭いてくれて、耀くんは自分は適当に済ませてシャツを着た。  綺麗な肩やお腹の筋肉が見えなくなってちょっと残念に思った。そしてそれを残念に思う自分が恥ずかしかった。  タオルをベッドのヘッドボードに置いて、耀くんは膝に乗せた僕を長い腕でぎゅっと抱きしめた。 「耀くん、重くない?」 「全然。それより幸せ。こうしてんのが」  耀くんの声が耳の中で溶ける。そして僕の内側をとろとろの蜂蜜のように蕩させてしまう。 「…明日は、会えるけどこんなに触れないからなぁ」  僕を抱きしめながら残念そうな声で耀くんが言う。 「僕もこうやって耀くんとくっついてたい」  膝の上でもぞもぞと方向転換して耀くんに抱きついた。 「碧はさ、ずっと可愛いけど今が1番可愛いな。俺のだから」 「なにそれ」  くすくす笑い合ってまたキスをした。  耀くんだって今が1番格好いい。僕のだから。  なんて僕は言えないけど。  明日の分も抱きしめ合ってキスをして、途中で耀くんが「コーヒー入れてあげようか?」と言った。うん、と応えたけれど、その間も離れたくなくて、コーヒーを入れてる耀くんの背中から抱きついて手元を見ていた。 「やり辛いけど可愛いから許す」  そう言って耀くんは笑っていた。    ソファに並んで座って、甘いコーヒーを飲みながらさっちゃんに色々助けてもらった話をした。 「さっちゃんて1番分かんない人だって思ってた。最近まで」 「言えないことがあると、言わないことも増えるからな」  耀くんが視線を落として言う。  さっちゃんは、ちかちゃんが好き。 「ちかちゃんは耀くんのこと好きだもんね」 「そのルートでバレたんだよ、お前のこと」 「え?」

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