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 夕焼けが始まったばかりの空を眺めながら、裏の駐車場までのんびり歩く。もくもくした雲からまだ色のうすい太陽の光がいくつも降りて、中世の絵画のようにクリーム色やグレーの濃淡の雲が太陽に照らされている。 「ああいう光をじょうずに撮りたいけど、なかなかうまく撮れないんだよな」  加工技術が発達しているから、色や光の調整をして理想の写真に近づけることはいくらでもできる。でも目の前で見たそのままの色を撮るというのは、案外、難しい。 「そうなんですか? 大倉さんの写真、どれもすごくきれいですけど」 「まあ、それは枚数撮ってるし、加工もするしな」  大倉はこの島でガイドとして働きながら、カメラマンとしても活動している。  駐車場に着くと、まず車のドアや窓を全開にして、熱い空気を逃がした。車は知り合いから譲ってもらったものだ。型は古いが大事に手入れして乗っている。 「どうぞ」 「おじゃまします」  車を持っていない陽斗は、車に乗る時いつもすこし申し訳なさそうな顔をする。大倉に負担をかけていると思っているのだ。  この国では「できる人がやって当り前」みたいな考え方をするから、車を持っている大倉が誰かを送っていくことはよくあることだった。だから陽斗の態度は、大倉にはとても新鮮に映った。  久しぶりに日本人の奥ゆかしさに接した気分になったが、もうそろそろ慣れてくれてもいいのにとも思っている。陽斗はそういう性格であけっぴろげに親しくできないと知ってはいるけれど、遠慮がちな態度は距離があるように思えて寂しい。 ちょっと宣伝させてください。 『喬に花咲く金歩揺』配信開始になりました。 https://www.amazon.co.jp/gp/product/B0CLHSNQHH 加筆して4万字を超えました。 アンリミ会員は無料です。

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