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 そして今、どういう運命の女神のいたずらか、その島で大倉と過ごしている。  あのみじめな冬の午後に、陽斗の気持ちを動かした写真が大倉の撮ったものだったなんて。 「え、どうした?」  突然、涙をこぼした陽斗に、大倉はびっくりした顔になる。 「何でもない」 「何でもないわけないだろ」 「うーん。嬉しいのかな」 「……そっか。じゃあいいか」  大倉は困った顔をしながらも、陽斗を抱き寄せて髪を撫でた。  日本であったことはまだ大倉にも誰にも話していない。でもそのうち聞いてもらいたいと思う時が来たら話そう。 「日本で俺の写真見てたなんてな」  大倉は自分の写真が日本語教師の募集ポスターに使われたことは知らなかったようだ。 「え、勝手に使っていいの?」 「いや。ちゃんと使用許可取られたのは覚えてる。島の紹介だかなんだかで使っていいかって。クレジット出すっていうし、島の紹介ならいいよって言った。でも現物は見てないから教師募集のポスターになってたのは知らなかったな。と言うか、そのポスターはたぶん日本でしか貼ってないんだと思う」 「へえ。なんかびっくり」 「こっちがびっくりだよ。てことは俺の写真で陽斗をこの島に呼んだのか」  そんな言い方をされて陽斗は驚く。 「ホントですね」 「なんだ、俺たち、運命の出会いだったんだな」  運命なんて言葉は重すぎる気がしたけれど、確かにこの写真は自分の運命を変えた。  陽斗はしみじみとそのアイコンを眺めた。 「あの時、あの喫茶店に入ってよかったな」  おしゃれなカフェには入りづらくて選んだ古びた喫茶店だったのに。 「この写真に出会えて、本当によかった」  涙を拭いて笑うと、大倉はぎゅっと陽斗を抱きしめた。 「そこは写真じゃなくて、俺に出会えてって言わないと」  恥ずかしくて言えなかった言葉を大倉はいとも簡単に口にする。そんなふうに言ってもらえることが何よりも嬉しくて、陽斗も勇気を出した。 「あ、あの、修二さんに会えて、よかったです」 「もー、陽斗はほんとに素直でかわいいなあ」  大倉は蕩けそうな笑顔になり、やさしくキスをした。  完  これは初めての紙の同人誌(アンソロジーですが)に載せた作品の改稿版です。同人誌では『海の向こうの南の島で』というタイトルで1.1万字ほどの短編でした。  もうちょっと書き込みしようと改稿したら、倍以上の長さになってしまいましたが、お楽しみいただけたら嬉しいです!(^^)!  感想など頂けたら励みになりますので、よろしくお願いします! 2023.12.3 ゆまは なお

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