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第24話

 バスルームが広くてきれいなユニットバスで良かった。  久しぶりの慣らしは、予想よりも時間と体力を使った。もとから、これ、苦手だったなあ、と数年前を思い出し、その時は喜んでやっていた自分に驚きもした。  俺たちは、やり直すんだ、あの時から。  だから、今苦しいこれも、あの時のように、喜んで出来るようになれるはずだ、と最後に、ざっと全身をシャワーで流して、リセットする。  ふわふわのバスタオルで身体を拭き、このあと何を着れば…と悩みつつ、迷った指先でバスローブを手にした。こんな、あからさまな装いで、改めて、これからあの先輩とエッチするのか…と身体を熱くする。さっき清めたばかりの腹の奥が、ずく、と存在を示すように重くなった。  控え目にドアノブを回したはずだったが、予想よりも大きく響いた気がした。  窓際のソファに腰掛けた海智は、俺の姿を見つけると、すぐに立ち上がり、すっぱりと腕の中に収めた。そのまま、言葉を交わす間もなく、唇を合わせ、もつれるように、キングサイズのベットに倒れこんだ。 「りん…」 「せんぱ、ぁ…っ」  結んだだけのバスローブは簡単に暴かれてしまう。舌を絡ませて、翻弄されているうちに、胸元を大きな手のひらが這う。鎖骨や胸元の溝を撫でて、わざと尖りの周囲を爪先でなぞられる。その足りない刺激に、身体が勝手にくねってしまう。立てた膝で内腿をすり合わせてしまう。むずむずと、熱が溜まっていく。  つ、と透明な糸が唇同士を結ぶ。海智は、眦を染めながら、とろけた笑みを見せる。 「りん、かわいい…」 「せん、ぱ……あっ」  その甘い笑みに、脳がどんどん溶けていく。  すると、待ち望んだ痺れが、胸元から爪先まで響く。  小さいピンクの尖りを、海智の男らしい指が押しつぶしたり、つまんだり、優しく撫でたりする。 「や…っ、んぅ…」  首筋にキスを落とす海智は、鎖骨の溝を舌で辿り、谷間を舐め、もう反対の乳首に息を吹き替える。ぞぞ、と鳥肌が立つ。 「りん、好きだったよね…これ」 「ひあっ、あっ…んんぅ…っ」  吐息がかかり、さらに尖りを強くしたそれを、海智は大きな口の中に収めて、唾液でたっぷりと濡らして舌で転がす。ざり、とした舌の表面で押しつぶされると、腰が跳ねてしまう。かと思うと、舌の裏側の弾力のあるそこで反対側に押しつぶされるとびりびりと背筋が痺れる。その舌が巻き起こす波のような刺激に、びくびくと身体は素直に喜び、反応してしまう。ぢゅ、と強く吸われて、終わりかと思い、視線を下げると海智の瞳とぶつかる。ふ、と唇が弧を描く。 「そんな寂しそうな顔しないでも大丈夫だよ」  荒い呼吸で、ぼんやりとそのいやらしい笑みを見返していると、海智は指で可愛がっていた反対側の乳首にしゃぶりついた。今度は、硬くした舌先で弾くように舐めつくされる。 「あっ、ああ…や、それ、だめ…っ、ぅんっ、ん…」  海智の細い髪の毛に指を指しこみ、握りこんでしまう。 「や、やぁ、…っ、んんっ…」  顔を横に振り、なんとか快感を逃がそうとするが、溜まった熱はどんどん膨れ上がっていくだけだった。ぎゅう、と内腿を締めると、それを海智の長い指がたどる。びく、と腿が揺れた瞬間に、内腿の間に手を指しこむ。誰も触ってこなかった、皮膚の薄い、弱い場所を、何度も往復するように撫でられて、すっかり身体は緩んでしまう。は、は、と短い呼吸しか出来ない。だらだらと唾液がこぼれるのを構っていられるほどの余裕もない。 「せんぱぁ…ぁ…っ、や…」  胸元にキスを振らされる。その愛らしいリップ音に足の力が抜けていく。内腿を撫でていた手が、ついに、根本をなぞる。律儀に履いてきてしまった下着の上に、大きな手のひらがあてがわれる。 「あっ、や…」  やんわりと揉みこまれると、すっかり形を変えているそれの先端が濡れて、いやらしい音がする。恥ずかしくて、腕で顔を覆う。目元が暗くなると、余計にその音が耳を犯す。海智が、ゴム紐を引っ張り、する、と下着をずらすと、勢いよく、小さい俺のそれが飛び出すのを感じる。 「かわいい…」 「ぃや…言わない、で…」 「見てごらん、こんなになってる」 「やあ…ぁんっ、んん、っ」  目元を覆っていた腕を簡単にベットに縫い付けられ、海智の低くかすれた声に導かれるように、自分の股間に視線を落とす。ぴくぴく、と小さく揺れながら、透明な雫をたくさん生み出していた。さらに身体が火照る。 「りん…」  囁かれて、視線をあげると、すぐ目の前に海智の顔がある。白い肌が赤く染まり、潤んだ瞳をしている。その情欲の顔に、息を飲む。唇を合わせたまま、海智が熱の帯びた声で囁く。 「好きだよ…」 「あっ、ああっ」  言葉と同時に、俺のそれを手のひらが覆い、ゆっくりと上下に扱く。自分のカウパーで濡れていたそこは、何もしていなくても、海智の手を滑らせた。海智に触れられたそこは、もう爆発寸前だった。  イキたい…っ  海智の首に腕を回して、唇を密着させ、舌を絡ませる。海智もそれに応えるように、舌の動きを大きくさせた。そして、立派な犬歯で舌を甘噛みされたのと同時に、鼻から甘い声を響かせて、俺は、数年ぶりに海智の手の中で射精した。  何度もびくびくさせる俺のペニスを、ゆったりと扱き、とめどなくあふれる精液を腹に零させた。その間も、唇は解放してもらえず、酸欠状態なのかくらくらする俺は、力が入らなくなった。腕がするり、と首から落ちたときに、ようやく口元から酸素を吸える。爪先まで、びりびりとまた帯電しているようだった。 「りん…、りん…」  顔中にキスをされる。そのじんわりと、また腰に熱が集まってくる。 「かぃ、ち…せん、ぱ…」  重い瞼で、海智を顔を覗くと、さらに笑みを深めた彼が、俺の名前を囁いて、唇に吸い付いた。 「んぅ…」 「りん…」  申し訳程度に巻き付いていた、緩んだバスローブの紐を海智がほどく。その肌を滑るタオルにすら、身体は反応してしまい、小さく息をもらした。 「えっ、せんぱ…っ!」  美丈夫が俺の股間に顔を落とす。まさか、と思い、目を見張り、顔を起こす。出したばっかりで、敏感なそれを優しく握る。舌を出して海智は、俺を見つめる。 「もっと、気持ちよくさせてあげる」 「だめっ、今は、ああっ、んっう…っ」  俺の制止の声もむなしく、濡れる血色の良い唇は、俺を簡単に飲み込んでしまう。出して間もなくの敏感なそれを、熱いぬめりが包み込み、目の前を星が飛ぶ。 「あっ、あ…や、だ…っあ…」  丹念に舌が頭を大きく舐める優しい動きだったのが、急に鈴口をいじめてくる。その強さに、背中をしならせる。それでも、帯電した快感は抜けていかない。簡単に、口の中のそれは、硬さを戻していく。  海智の長い指が、へそをくすぐり、急いで見やると、溜まった俺の精子を掬い上げる。どうするのかと思えば、その指で会陰を撫でられる。 「ぅああ、あっ…や、んぅ」  俺のカウパーと、海智の唾液と、で既にぬめりを帯びており、先ほどきれいにした孔を湿った指がなぞる。びく、と内腿が震え、海智の頭を挟んでしまう。 「あっ、ごめんなさ…っ」  顔を起こした海智は、うっとりと俺に微笑んで、ぬらぬらと光る唇で、内腿に強く吸い付いた。ぴり、とした痛みすら、快感にしてしまう身体が恐ろしくなる。  数回、跡をつけた海智は、にゅちゅにゅちゅと、俺の撫でながら、もう一度口に含む。その瞬間に合わせて、長い指が一本侵入してきた。久しぶりの指に、身体は驚くことなく、飲み込んでいく。さっき、涙ながらにほぐした成果だった。数回出し入れをした指は、意思を持って動き出す。腹の裏を撫でられて、ぞぞぞ、と身体の中を何かが走り抜ける。 「あ、あ、あ…やぁ…あ、んぅ…」  ちゅ、ちゅ、と愛おしそうに俺の肉棒にキスをする海智は、満足そうに笑う。 「りん、かわいい…」 「や、やめ…っ」  自分のそれ越しに好きな人が微笑んでいる様子は、背徳的で一気に脳を焦がす。中を弄ぶ指が、何かにひっかかったように動きを止めた。そこをとん、と軽く押されて、びり、と強く身体が痺れる。爪先を丸くして、シーツに皺を寄せる。 「ここだったね、りんの、イイとこ」 「ぅわ、あ、あっ、それ、だめ、えっ、あ」  さすさす、と優しく撫でられると、指先が震える。とんとん、とリズミカルに押されると、身体が跳ねる。頭の先から、爪先まで、快感が行っては帰ってくるを繰り返して、ペニスがどんどん膨れ上がる。持ちあがってきた双玉に海智の柔らかい唇が吸い付く。 「ひゃっあっ、やめ、やめてっせんぱっ」  ざり、と熱い舌で舐められ、それぞれをしゃぶられる。ちゅぽ、と唇が離れると、海智はさらさらのハイトーンを上下に激しく揺らしだす。じゅじゅ、とペニスを吸われながら、あの形のいい唇が、竿をしごく。そして、中では、いつの間にか増えた三本の指が、しこりをリズミカルの撫で、いじめる。もう頭の中がいっぱいで、射精感に支配される。 「やっああっ、い、く、いくっ、せんぱ、いくっ」  やめて、離して、と美しい髪の毛を握るが、海智はわざとらしく俺を見上げてから、強くしこりを押し込んだ。 「あああっ!」  びくぅ、と身体が大きく跳ねて、痙攣する。勢いよく海智の口内へ吐精してしまう。その背徳感にさらに、身体がしびれ、ぴゅ、と遅れた精子が溢れる。ぎゅう、と力いっぱい孔は好きな男の指を捉えて離さない。ようやく身体が、弛緩し始めると、海智は、最後に強くペニスを吸い、すべての精子を飲み干した。 「や、なんで…きたな…っ」  だるい身体を起こし、急いで海智の口元をひっかかっていたバスローブの袖で拭う。しかし、海智はにっこり笑い、俺の頬にキスをした。 「せんぱい…」  好き。  大好き…。  今までのことは、夢だったんだよね。  ぎゅ、と抱き着く。しっとりと汗ばんだ鎖骨に顔を寄せる。質の良い浴衣は、すっかり皺になっている。む、と強いバニラの香りに、くらくら視界が揺れそうになる。 「りん…」  大きな身体が、優しく抱きしめ返してくれる。それだけで、こんなにも幸せになれるんだ。  顔を上げて、立派な喉仏に吸い付く。ひく、とそれが上下するのがわかって、嬉しくなる。顎にキスをして、両手で端正な顔を包み、キスをする。ちゅ、と吸い付くと海智も返してくれる。舌が唇を撫でたところで、距離をとる。  はだけた浴衣の胸元に手をいれると、引き締まった胸板がある。どくん、と身体の奥が大きく動き出すのを感じる。その弾力ある胸元を撫で、小さな飾りに指を滑らす。小さく、目の前の身体が揺れることに心地よくなる。 「りん、俺はいいから…」  苦し気にそうつうぶやく海智が、愛らしくて、その上に膝立ちになる。はだけた浴衣をさらに肩口まで落とす。鎖骨に吸い付いて、肩に甘く噛みつく。 「っ…」  耳元で、甘い吐息が聞こえて、さらに熱が集まる。後ろに手を回し、どうなっているかわからない帯に苦戦する。む、と意地になっていると、くすりと笑われてから、海智が自分で帯を解いた。はら、と浴衣が白い肌をあらわにさせる。  引き締まったアルファの身体にたまらなくなる。  胸元にキスを落とし、小さな乳首に舌を伸ばす。腹筋の筋をキスしたり舐めたり味わう。 「りん…っ」  肩をぐ、と押されるが、嫌、と頭を振り、抱き着く。そして、そっと、足の付け根を撫でる。そこに顔を近づける。 「今度は、俺が、先輩を…してあげますね…」  その時、海智がどんな顔をしているのか、俺はまだ知らなかった。

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