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運命の相手
川で洗濯物をしていたら、
「ニンゲンだ」
「ニンゲンが来たぞ」
ざわざわと森が騒ぎはじめた。
「わざわざ食われに来たのか?暇だな」
白鬼丸がやれやれとため息をつきながら体を起こし服を脱ぎはじめた。
「ちょっと待って」
「いい加減慣れろ」
人型から熊みたいにでっかい白い犬にその姿を変えると猛然と走り出した。
白鬼丸の裸は何度も見てる。痩せっぽっちな僕と違い筋肉隆々、男らしい体格の白鬼丸。比べ物にならない。雲泥の差だ。
洗濯を中断し急いで家に戻った。
「ほれ」
十分後咥えていた若い男性を床の上にそっと置いた。年は二十歳半ば。黒い狩衣を着ていた。黒は身分の高いひとの色だ。
「あと少し助けるが遅かったら熊と鵺の腹ん中だったぞ。翠鳳が言うには毒がからだに回っている」
「助けなきゃ」
迷っている時間はなかった。
「りん、死ぬ気か?」
「なにもしないよりはましだよ」
血を吸い出してはぺっと吐き出した。それを五回、六回と繰り返した。
「うっ……ん」
虫の息だった男性の体が微かに動いた。
良かった生きている。ほっとして胸を撫で下ろした。
「翠鳳が言うには矢が背中に刺さり、馬ごと崖の上から落ちたらしい」
「それってつまり生きている人を狙ったということだよね?」
「まぁ、そうなるな」
泥だらけの顔を濡れた布でそっと拭くと、思わず見惚れてしまうくらい凛々しく、そして端正な顔だちだった。
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