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運命の相手
人とあやかしが共存することが出来れば一番いいのだろうけれど、人が先に破ってしまった。
翠鳳さまの立場だってあるのに。ほんとうは男性を助けるべきではなかったのかも知れない。でも怪我をしているひとを見て見ぬふりするなんて僕にはどうしても出来なかった。
「翠鳳さまごめんなさい。男性を助けたことで翠鳳さまの立場が悪くなる。考えてみれば分かることなのに」
「過ぎたことだ。謝る必要はない」
頭を下げようとしたら翠鳳さまの大きな手が肩に触れた。日焼けしたゴツゴツした武骨な手は、畑仕事をしていたおじいちゃんとおばあちゃんの手によく似ていた。会いたくてももう会うことが出来ない。もっともっと長生きして欲しかった。
僕を残して何で先に逝ってしまったの。涙が溢れた。
「な、泣かせるつもりはなかったんだ。りん、ごめんな」
翠鳳さまが急にそわそわしはじめた。
「浅葱、翡翠の気配はないよな?翡翠を怒らせたら痛い目にあうからな。りん、頼むからすぐに泣き止んでくれ」
翠鳳さまが大きな体を震わせビクビクしながら頭を下げた。
「違うんです。誤解を招いてしまいすみません」
手で涙を拭いながら慌てて頭を下げた。
「亡くなったおじいちゃんとおばあちゃんの手に翠鳳さまの手が似てて、あれこれ思い出したら涙が止まらなくなってしまったんです」
「りんさえ良ければ話しを聞かせてくれないか?
おじいちゃんとおばあちゃんは米とあづましずくという名前のぶどうを作っていたんです。地震に遇って放射線の風評被害に苦しめられても、水害の被害を受けても、諦めず畑を耕し、一年かけて果物を作り、やっと出荷の時期を迎えたのに根こそぎ全部持っていかれてしまって、残ったのは借金だけ。すべてを失ったおじいちゃんとおばあちゃんは……」
一度は止まったはずの涙が堰を切ったかのように次から次に溢れ、止まらなくなってしまった。
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