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運命の相手

「解せない顔だな」 「さっき、妹と」 「間違ってはいない」 頼理さまはしばらく考えたのち、はっとして目を見開いた。 「もしかしてりんは半陰陽か?」 驚いたような声をあげた。 「そうだ。さっきなんと言おうとしたんだ?」 「私と一緒に都に行かないか?私の身の回りの世話をしてもらいたいと」 頼理さまはそこで言葉を止めた。 「でも半陰陽は国に災いを起こすと、迅殿が」 「お前はそれを信じているのか?」 「そんな戯れ言、信じていません。鬼をはじめとするあやかしと半陰陽は国を乱し、災いを起こす。祟りの原因はすべてあやかしの仕業。あやかしが人を呪い殺そうとしている。だから百鬼夜行のあと疫病が流行る。憑き物が流行る。迅殿はそう申したが、私はそうは思わない。りんと、えっと」 「青丹だ。いい加減覚えろ」 「すまぬ、青丹殿。りんと白鬼丸が私をが助けてくれた。鵺に食われていてもおかしくなかったのに。恩を仇で返すなど私は出来ない」 頼理さまがぎゅっと唇を噛み締めた。 頼理さまが寝たことを確認してから、 「青丹さま……じゃない、兄上だ。兄上お願いがあるんですが」 おっかなびっくり声を掛けた。 「迅が都で何をしているかこの目で見たいってだろ?」 「何で分かったのですか?」 「顔にそう書いてある」 「顔?」 月明かりが部屋のなかを煌々と照らすだけで照明器具はない。燭台の灯りもつけてはいないのに、よく見えるものだと感心した。 「迅の傍若無人ぶりは目に余る。母上の話だと、ここにいる男は迅に楯突き、東宮を剥奪され、臣籍降下させられた。いずれは遠方の地に流され、殺される運命だそうだ」 「頼理さまが東宮?殺される運命ってそんな……」 驚くことばかりで理解するまで時間がかかった。

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