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運命の相手
「そちが噂の青丹の妹か?どう見ても男のわらべやだが。まぁ、いい。詮索しても仕方がないからな。儂はこの屋敷の主、黒谷惣右衛門《くろたにのそううえもん》だ。頼理久しいのう」
天狗のお面を外す男性。頼理さまがはっと息を飲んだのが分かった。
「もしや良貴《よしたか》殿ですか?十年前に悪さばかりする天狗の討伐に向かわれてそのまま行方知らずになった」
「天狗を討伐するつもりが臣下の裏切りに遭ってな。死にかけておったところをそこにおる黒緋に助けられた。気付けば天狗の長だ。人生何があるか分からぬのう」
感無量といった面持ちで話す男性。
良貴殿は私の伯父だ。私と同じで長男として生まれ東宮になったが身分を剥奪され廃太子となった。頼理さまが分かりやすように説明してくれた。
「あやかしの里に足繁く通っていると小耳に挟み心配していた。儂の代わりに頼理に首を突っ込むなと忠告してくれと青丹に頼んでいたんだ。命が幾つあっても足りんぞ。現に矢で狙い撃ちされたんだろ?」
「なぜその事をご存知なんですか?あなたは本当に良貴殿なのですか?なぜ文を寄越してくれなかったのですか?」
矢継ぎ早に質問する頼理さま。
「儂は正真正銘の良貴だ。生きているのが弟の崇人《たかひと》に知られたら何の罪もない里の者たちが命を落とすからだ」
おもむろに袖を捲る惣右衛門さま。
「昔の火傷の跡だ。これで信じてくれるか?」
右手首の皮膚が分厚く硬くなっていた。それを確認したのち頼理さまが静かに頷いた。
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