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運命の相手
「目覚めたらりんと白鬼丸がどこにもいなくて。青丹殿以外みな知らぬ顔。なぜここにいるのかと青丹殿に聞いたら悪い物の怪が襲ってきたと。私のためにりんが薬草を取りに行ってくれていると聞いてはいたが、暮らせど帰ってこなくて。心細しくて。このまま帰ってこないのではと気が気ではなかった。青丹殿には心配無用と言われたが、心配で落ち着かなかった」
頼理さまの目にうっすらと涙が浮かんでいた。
「うなされていたから心配した」
頼理さまの手が遠慮がちに頬に触れてきた。
「私のためにほとんど寝ていないと青丹殿から叱られた。りんを守るべき立場なのに不甲斐ない」
「そんなことありません」
首を横に振った。
「きみは他人を思いやることが出来るやさしい心根の持ち主だね」
「焼きもちを妬くなんてみっともないぞ」
「うるさいな」
廊下から青丹さまと黒緋の声が聞こえてきた。
「りんの家も賑やかだったが、ここはもっと賑やかだ」
「頼理さま、お体は?」
「青丹殿がりんが煎じてくれた薬草入りの茶を飲ませてくれたからか傷はだいぶ痛まなくなった。でも手はまだ震えが止まらぬが」
耳を気にする頼理さま。
「蜘蛛はもういないと聞いたが、りんに危害が及ばなくて良かった。私だけに取り憑いてくれて良かった」
嬉しそうに微笑む頼理さまを見た瞬間、胸がドキドキして、顔から火が出るくらい恥ずかしくてまともに頼理さまの顔を見ることが出来なくて俯いた。
「邪魔するぞ」
五色の絹で作られた几帳の影から厳つい体格の大男がぬっと姿を現した。
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