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運命の相手

「彼が藤黄《とうおう》だ。人型になってもいいが、服を身に付けておらぬゆえ、りんに恥ずかしい思いをさせるのは申し訳ないと思ってな。そちが見たいなら見せてやってもいいぞ」 「人の体を安売りしないでくれるか」 白い烏が惣右衛門さんをきっと睨み付けた。 「そう怖い顔をするな。せっかくのいい男が台無しだ」 「大きなお世話だ」 ぷいっとそっぽをむく藤黄さま。カァ~~カァ~~と羽をバタつかせ激しく鳴き出した。 「黒緋頼む。藤黄を黙らせてくれ。五月蝿くてたまらん」 惣右衛門さんが耳を両手で塞ぐと、頼理さまも耳を両手で塞いだ。 黒緋さまは至って普通で、平然としていた。これだけ耳元で鳴かれて五月蝿くないのかな? ふと何気につぶらな黒い瞳と目が合った。 「こら藤黄」 ドタドタと座敷に入ってきた青丹さま。 「りんが怖がってるだろ?今すぐ黙らないと舌を抜くぞ」 烏の首根っこを掴むとじろりと睨み付けた。 「兄上、僕は大丈夫ですから。藤黄さまが死 んでしまいます。お願いですから手を離してください」 青丹さまがニヤリと笑んだ。青丹さまだけではなく、なぜか藤黄さまも。 「猿芝居は止めろ。くだらん」 黒緋さまがため息をついた。

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