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運命の相手

「ただ単に兄上と呼んでもらいたかっただけか。たく、はた迷惑な連中だ」 やれやれとため息をつく白鬼丸。人型になり背伸びをしたり肩を手で揉んだりしていた。 「林の中に露天風呂がある。湯舟は大きな岩盤の上に築かれ、すぐ脇を滝が流れ落ちている。なかなかいい場所だ。付き合え」青丹さまと藤黄さまが有無言わさず頼理さまを連れていってしまった。 「屋敷の中にも風呂もある。りんはそっちのほうがいいだろう」 「黒緋さま、何やら何までありがとうございます」 三つ指をついて頭を下げた。 「だからいちいち礼はいらない。さっきも言ったはずだ」 黒緋さまがぶっきらぼうに口にした。 「そうはいきません。兄上だけでなく僕たちもお世話になっているのですから礼くらい言わせてください」 「真面目というか、何というか、まぁいい」 黒緋さまがすっと立ち上がった。 「りん、迅に言われたことは気にするな」 「黒緋さま、記憶が曖昧で迅に何を言われたかどうしても思い出せないのです。迅に何を言われたか教えてください」 「なんだって?」 黒緋さまが頓狂な声を出した。 「小さい声でぶつぶつ言われても聞こえる訳がないだろ」 白鬼丸が黒緋さまをチラッと横目で見た。

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