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運命の相手

「確かスペアとか言っていたな。初めて聞く言葉ゆえ耳に残ったのかも知れない。どういう意味だ?」 「予備としてとってあるもの。補充用だ」 「そうか。ひとつ勉強になった。ということは……」 黒緋さまの表情が変わった。 「迅は巫女としての力を失いつつある、とうことか?」 「犬しかやったことがないから分からないが、巫女の仕事は神様を敬い天下泰平を祈ることだと俺は思う。迅に人民に手を差しのべる優しさと器量があれば、神様から賜った力を失うこともないと思う。贅沢三昧、わがまま放題、分をわきまえず政にまで口を出す始末。神様に見放されても当然といえば当然だ。それに比べりんはあやかしの里みんなに愛されている。まぁ、例外はいるがな」 「やはりそちは翠鳳の若い頃にそっくりだ」 黒緋さまの目がやたらとキラキラと輝いていた。 「すごく嫌な予感がする。気のせいか?」 危険を察知した白鬼丸。犬型になって逃げようとしたけど、 「この俺から逃げるなど百年早い」 あえなく黒緋さまに捕まってしまった。しかも逃げないように鳶色の羽で白鬼丸の体をしっかりと包み込んでしまった。 「りん、白鬼丸を借りるぞ。裸の付き合いをしてくる。すぐに頼理が戻ってくる。今夜はゆっくり休め」 「誰がお前となんか裸の付き合いをするかよ!」 「本当はしたい癖に」 黒緋さまの腕のなかで手足をバタつかせる白鬼丸。白鬼丸のほうが黒緋さまより身長があるのに、がっしりとした体格にも関わらずびくともしなかった。 「無粋なやつめ。空気を読め」

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