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運命の相手

「竜神と翠鳳と翡翠は認めているが、俺はアイツにりんを嫁にやるとは一言も言ってないぞ。あんなへなちょこ、へっぴり腰の若造にりんを幸せに出来るわけがない。イケメンだかなんだか知らないが顔で選んで失敗して、りんが苦労するのが目に見えている」 黒緋さまがじっと白鬼丸を見た。 「気持ち悪いやつだな。じろじろ見んな。俺の顔には何も付いていないぞ」 腹を立てる白鬼丸に、黒緋さまがふふっとほくそ笑んだ。そしてまさかの一言を発した。 「可愛いな。ますます気に入った」 「へ?」白鬼丸が呆気に取られ、しばらくの間固まっていた。 「良貴殿や翠鳳殿もそうだがみな酒豪ですごいな」 大広間で呑めや歌えやのどんちゃん騒ぎをする天狗たち。愉しげな笑い声や賑やかな声が夜遅くまで聞こえていた。 「頼理さまはお酒は飲まないですか?」 「飲める口ではあるのだが、苦い経験があってな、それ以降飲まぬことにしておる」 ふわふわの真新しい布団は、鬼の棟梁の娘であり、竜神の巫女でもある僕を歓迎するために惣右衛門さんがわざわざ準備してくれたものだ。 頼理さまと布団を並べて一緒に寝るのが初めてで心臓が飛び出るんじゃないか。そのくらいドキドキしていた。 怪我をして動けない頼理さまを看病するために隣に布団を敷いて寝起きしていたけど必ず白鬼丸が側にいてくれたら正確にいえば二人きりじゃなかった。その白鬼丸は黒緋さまに捕まったままで、待てど暮らせど戻ってこない。 「そんなに緊張されたら、私まで緊張するではないか。」 頼理さまが困ったように苦笑いを浮かべた。 「何もせぬ。寝よう」 先に布団に横になった。

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