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45.プラドの小さな不安

   楽しかった初デートを終えて、またいつもの学園生活が戻ってきた。  少し変化があったといえば、ランチタイムだけでなく朝や授業後の時間も共に過ごすようになった事だろう。  プラドが「散らかってないか確認する」と言って、毎朝部屋まで迎えに行くようになったからだ。  毎朝少し早めに行っては、散らかりかけた部屋を片付けさせ、余った時間でソラの髪を結った。  おかげで最近のソラはプラドに凝った髪型にされるので美貌に磨きがかかっている。  そしてプラドといえば、やっぱり自分がそうさせたにも関わらず周りがソラに見惚れるのを良しとせず、ソラの背後で威嚇した。  そんなプラドを周りは敬意を持って同担拒否守護神と呼んだ。 「行くぞメルランダ」 「……ふむ」  そんな生活が続き、学園でも当たり前の光景になってきた頃だ。  授業を終え、帰るぞとプラドはソラに手を差し出す。  ソラは少し何かを考える素振りを見せ、差し出されたプラドの手を握った。 「……」  今日も今日とて全方面に付き合ってるアピールをして歩くプラド。  しかしどうにも、小さな不安が心にひっかかる。  握った手に力を入れれば、ソラも同じように握り返してくれる。  同じ思いを返されたようでほんの少し安堵するが、やはりすべての不安は払拭できなかった。  ソラが、自分から手を握ってくれなくなったのだ。  さらに言えば、プラドが手を差し出しても一瞬、妙な間がある。先程のように。  以前ならば、プラドが戸惑うほど積極的に手を握ってくれていたというのに。 「……倦怠期、か?」 「なんだ?」 「……いや……」  倦怠期。恋人にドキドキやときめきが無くなる期間。  いやそもそも、ソラが自分にドキドキやときめきがあったのかは不明だ。  ある程度の好意は持たれている自信はあった。  ただソラがその感情を上手く処理できなくて戸惑っているだけだと。  だがもし、はなからプラドに恋愛感情など微塵も感じていなかったら?  いや、ソラは己に恋愛感情を持っていた。それは間違いないのだ。  だがもし、恋愛感情があったとしても、それはプラドが思う以上に僅かな物で、その僅かな恋愛感情が薄れて消え去りかけているのだとしたら? 「……メルランダ!」 「どうした?」 「今日、街に行かないか」 「今日は実験室に行きたい。昨日の続きをしたいんだ」 「……そうだったな」  これは、一大事だ。  僅かでもあったはずの好意が消えかけているのなら、一刻も早く復元させなくてはならない。  そう焦った上での発言だったが、いとも簡単に断られてしまった。  それはそうだ。魔術馬鹿のソラが実験を途中で投げ出すはずがない。  プラド自身も共に手伝っていて、とても有意義な時間を過ごしているつもりだ。  けれど、このままでは駄目なのだ。 「……じゃあ、実験が成功したら祝いとしてうまいもんでも食べに行くぞ」 「それは初めてだな」 「たまには良いだろ」  頼むからうなずいてくれ、と念じるプラドの視界で、ソラはやっぱり一瞬の間をおいて小さくうなずいた。  今更逃してたまるか。  プラドの奮闘が再び始まった。  

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