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第9話 回収しないで下さい
演習が終わったあと、ロイはみんなの前で叱られた。転移魔法を使うのは危険だと言うのだ。確かに、誰かと一緒に転移するのはリスクが大きいけれど、この程度の距離なら座標がズレることは無い。ただ、セドリックが思ったより重たくて、着地がいささか乱暴にはなったけど。
「だって、ずるいじゃないか、アレックスのチームには魔法を使えるのばっかり揃えて」
ロイがそう言うと、セドリックが眉をひそめた。それは言わない約束だったらしい。
「なるほど、だがセドリックのチームには魔術学科から編入してきたロイ、お前がいただろう?」
教師がそう口を開いたから、ロイはまた、反論した。
「俺が来るまでは、一方的にアレックスのチームが魔法を使って攻めてたんじゃないのか?」
「まぁ、そうだな」
「なんだよ、それ。演習なんだから、教師が力のバランスを見てチームを編成するんじゃないのかよ」
すかさずセドリックが口を挟んだ。
「戦闘において、相手と力が互角とは限らない。自分たちの能力を認識して、そこからの最大値での戦い方を考える事も大切な授業だ」
それを聞いた途端、ロイは教師の顔色を伺った。確かに、そういった授業は必要だろう。
「それをアレックスにもやらせなくちゃ意味が無いんじゃないか?」
ロイがそう言った途端、テリーの眉間にシワがよった。もちろん、教師の顔も引きつっている。
「私が優遇されている、と?」
軽く眉間に皺を寄せ、アレックスが口を開いた。テリー以下の、近衛候補らしい生徒がロイを睨んでいる。
「そうだろう?王子だからって何時でも完全な布陣で戦えるとは限らないだろう?敵が何時でも王子が相手だからって手を抜いてくれるとでも言うのか?逆だろう?王子が相手だと分かれば総力を上げて潰しに来るのが普通だ」
ロイがそう言うと、テリーが黙ってアレックスを見た。アレックスの反応を確認しているのだ。誰も言わなかったけれど、本当にどこかの敵国と戦ったら、一番最初に狙われるのは王子であるアレックスだ。
「つまり、なんだ?」
アレックスの片眉が上に上がった。その目はロイを睨んだようで、周辺を威圧している。
「あんたが軽んじられているんじゃないの?」
ロイは躊躇いもなく言った。魔術学科では魔力量が全てだった。だから平民だけど、聖女は好き勝手をしてる。下位貴族でもロイは発言を好きなだけしてきた。
「お前、ふざけるな!」
ロイの発言に反応したのは、テリー以下の近衛候補たちだ。これではまるで自分たちがアレックスを軽視していると思われる。
「あんたたちうるさい」
ロイは、三下雑魚程度にしか見ていない近衛候補たちを諌めた。
「第一だろうと第二だろうと、王子なんでしょ?」
ロイが小首を傾げながら聞く。
「そうだ」
アレックスが短く答えると、ロイは頷いた。
「だったら、自分で考えることも、必要なんじゃない?楽すること覚えちゃダメだよ」
ロイがそんなことを言ったものだから、セドリックが慌てて後ろからロイの口を塞いだ。不敬だとでも言うのだろうか。
「なるほど、お前は私が自分で考えていない。と言うのだな」
アレックスはそう言いながら、唇の端で笑っているようだった。
「うん。肝心なところをテリーに押し付けてる気がする」
テリーは騎士団長の息子だから、何事もなければ王子たちの代で騎士団長の職務に着くことだろう。そう考えれば、未来の側近なわけだから、あれこれ考えさせる事も必要かもしれない。けれど、それとこれとをこの演習に持ち込まれては困る。
「演習は演習。腹の探り合いは別のところでやって」
ロイがハッキリとそう言うと、テリーが目を閉じて深くため息をついた。おバカな側近候補たちをふるいにかけたかったのだろう。しかし、かけ終わる前にロイが、そいつらをまとめて切り捨ててしまったのだ。
「分かった。明日の演習の構成については、私が考えておこう」
アレックスがそう宣言をしたら、なぜか解散の流れになった。みな、ゾロゾロとシャワーを浴びに移動を始めて、当然のようにセドリックがロイの手を掴んだ。そうして、ロイを連れていこうとするけれど、ロイは歩こうとしないで手を繋ぐセドリックを見た。
お互いの腕の長さ分だけ離れた状態で、セドリックとロイが見つめ合う形だ。
「どこ行くの?」
一応、抵抗の意思があることを示すために、ロイが懸命に足をふんばった。もちろん、セドリックに対してそれが有効だとは思ってなどいない。
「シャワーを浴びるにきまっている」
セドリックはそう言うと、ロイの抵抗など気にもしてい無い様で、ロイの手をそのままひくと、まるで荷物のように肩に担いでしまった。
「うわっ、なに?なんでぇ」
体格差があることぐらい分かってはいたが、ここまで軽く扱われるとは思ってもいなかった。
「戦場では、傷付いた仲間を助け出すこともあるからな」
そんな事を口にして、セドリックはロイを担いでシャワールームに入ってしまった。
「うひぃ」
シャワールームの中にある、背もたれのないベンチのような椅子に下ろされて、ロイは若干悲鳴のような声を出した。
魔術学科では、こんなのおめにかかったことなんてない。シャワーと言うより、大浴場があってそこに同じ学年の生徒が入っていく。洗い場にもベンチの様な椅子が置かれていて、そこに数名座っていた。
目の前を行き交うクラスメイトたちの股間が嫌でも目に入った。
「……………うそ」
状態はどうあれ、みな立ち上がっていた。そして、それを競うように処理しているのだ。
その異様な光景にロイの目が奪われている隙に、セドリックはロイの下履を脱がしにかかっていた。
「えっ?」
ロイが気が付いて抵抗しようとしたときには、既に下履を寛がせているセドリックに、向かいあわせの体勢で座らされていた。
すなわち、ロイがセドリックの太腿の上に足を広げて座っているのだ。
「なんだ、アレックス様相手にあれだけやり合ったのに、全然なんだな。肝が座っているのか?」
むき出しにされたロイの中心を見て、セドリックが感心している。そんなところで感心されても、ロイだって困るというものだ。
「な、な、な、なんなの?」
ロイはおおいに慌てた。そもそもセドリックの言っている事が理解できない。
「普通ならあれだけのことしでかせば、多少なりとも反応しそうなんだがな」
そう言ってセドリックの手が、ロイに触れてきた。
「ひぁ……」
急所を触られて、ロイがおかしな声を出した。思わず腰が動く。でも、そうしたら、セドリックの手がロイの腰を押さえる。逃げたくても逃げられなくて、ロイは思わずセドリックの肩を掴んだ。
「掴むのは肩じゃない」
セドリックがそう言ってロイの手を下に持っていき、自分のとまとめて握らせた。
「手が小さいから、上手く回らないな」
そう言って、ロイの両手で握らせてきた。自分のだって小用の時しか握らないのに、いきなり他人のモノとあわせて握らされるなんて、むちゃくちゃだ。
「や、ヤダヤダヤダヤダ」
ロイが嫌だと言ってもセドリックは聞いちゃいない。ロイの両手と、自分の手でもって、二人分を擦り合わせる。セドリックの先端から出てきたものが、ロイのモノにまでまとわりついて、ロイが聞いたことのない音をたてている。
「ぅん……んん」
耳元でセドリックの荒い息使いが聞こえて、視界には見たこともないような形と色をしたモノが、自分のモノと一緒に自分のてのひらの中にいる。
そうじゃないのに腰が揺れて、口が馬鹿みたいに半開きだ。テオドールにされた時は違う。全く違う快感がロイを襲った。見なければいいのに、一旦見てしまうと、目が離せなくなって、ロイは自分の手をひたすら見ていた。そうして、たかまった二人分がどうなるのか、瞬きも忘れて見てしまったのだ。
「ーーーーー!」
何が起きたのかわからないまま、ロイは瞬きを繰り返した。起きてはいけない一種の事故の様なものが起きた。そして、見せてはいけない、否見てはいけないロイがそこにいた。
「ロイ…お前……」
そう言いながら、セドリックの喉がなった。
全く状況が分かっていないロイは、どうしていいのかわからないと言う顔をセドリックに向けている。
「す、すまない」
セドリックはそのままロイを抱き上げると、浴場に向かって慌てて移動した。そうしてロイを抱き上げたまま湯船に飛び込んだ。もちろん、服を着たままだ。
「な、なに?」
強制的に頭まで沈められて、勢いよく洗われた。
「うん、綺麗になったな」
満足そうに一人頷くセドリックに、ロイは抗議の眼差しを向けるのだった。
頭からずぶ濡れで、制服も水を吸って重い。
ロイは無言で、魔法を使った。
そうして、なんでこんなことになったのか、理由を聞いて怒るより呆れた。
曰く、命の危機に晒されると、生殖本能が刺激されるから、素早くそれを鎮めなくてはいけないらしい。午後の演習の後は、大浴場でするのがお約束なんだとかで……配属されれば、上官のモノもやらされるとか……そんなことを聞いて、ロイは物凄く変な顔をした。
「俺、そんなことで興奮とかしないから」
セドリックに脱がされた、下履きを履きながらそう言うと、ロイはセドリックを下から睨みつけた。
「そーゆーお世話は、ホントいらないからねっ」
いい捨てる様に口にして、ロイは転移魔法でその場から消え去った。
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