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第36話 続・悪役令息のやんごとなき事情

 建前として、アーシアは自分の部屋には帰ってきた。  テリーも頭が硬い方だから、女であるアーシアを立会人として隣に立たせてはくれないだろう。当然、中にもいれてくれないのは、分かっている。  そんなわけで、アーシアはまた鏡を取り出した。鏡を使ってロイの部屋の中は覗けないけれど、声は聞こえることが分かったからだ。  結界の外にある鏡で、音が拾えるものを探したら、最適な鏡を見つけだのだ。  それはなんと、テリーのポケットにあった。騎士団長の息子で、侯爵家の子息であるためか、身だしなみに気を使っていたのだ。 「ドア越しって、またいいわねぇ」  テリーのポケットにはいっているから、当然、鏡には何も映らない。けれど、扉越しに聞こえてくる声がしっかりと拾われて、アーシアの、耳に届くのだ。 「想像力が開花するわ。やっぱり平凡っていいっ」  アーシアは鏡を胸に抱いて、聞こえてる声を堪能することにした。これならテオドールにバレることは無い。何しろ結界の外だから。テリーは魔力に結構疎いので、自分のポケットの鏡がアーシアの鏡と繋がっている事には気づかない。  そんなわけで、アーシアは平凡容姿のロイのイベントを堪能しているのだった。鏡をポケットに入れていることで、アーシアの協力者になってしまっている事に気づいていないテリーは、ほぼ仁王立ちで扉の前に立っていた。  ウォーエント子爵夫婦から許可を貰い、テオドールが王族の閨事専用の結界を張った。隣国の王子であるマイセル付きの侍従が立会人として部屋の中に入っている。今夜のことは、既に両国の国王へ報告済だ。  明け方に、マイセルを迎えに使者が来るだろう。それまで、テリーはこの扉の前に立っていればいいことだった。 「下手に廊下まで暖かくされて、眠くなってしかたがない」  テリーが不満なのは、自分一人が廊下に立たされていることだった。扉越しにテオドールの気配は感じている。あちらも立っているのだろうけれど、テリーの視界は壁しかないのだ。見ていて楽しいかどうかはともかく、動くものが見られるテオドールが羨ましかった。 「やだぁぁぁ」  また、ロイの悲痛な声が聞こえてきた。  混ぜ物になる不安を無くすために、未使用の腹を器にする。と言われて、誰かを用意したのかと思えば、それがロイだと聞かされて、テリーはかなり驚いたのだ。二人っきりでダンジョンに潜っていたのに、セドリックが手を出していなかったとは、思わなかったのだ。 「変なところで真面目になるから、こんなことになるんだ」  テリーは背後から聞こえてくる、ロイの声をただ聞くだけだ。王子たちの声は全く聞こえない。扉の中にいるテオドールは、黙って見届けさせられているのだから、随分と忍耐強いというわけだ。 「隣に立たせればよかったな」  今更、セドリックを追い払った事を後悔したけれど、隣に立たせて、中から声が聞こえる度に八つ当たりされても困るわけだ。けれど、無言で耐えるセドリックを、見て見たかった気もするのだった。 「こ、怖いよぉ」  今度は、ロイが泣き出しそうな声を出てきた。少し掠れたような声が、なんともいえない。いったい、ロイは何に脅えているのか、テリーは深いため息をついて自身を落ち着かせた。 「ごめんね。怖がらないで」  ロイを抱き抱えるアレックスは、ロイの両目から零れる涙をしきりに唇で拾っていた。アレックスの腕の中で、ロイは小刻みに体を震わせている。縋るようにアレックスの腕に頬を擦り寄せてきていた。  そんな姿も可愛らしいのだが、この状態で身動きが取れないのは、アレックスにとってはだいぶ辛かった。 「見て、ロイ」  アレックスはギュッと両目を閉じているロイに、優しく声をかけた。小刻みに震えるロイの体を優しく撫でて、何とか落ち着かせてみる。ロイが何度か体をビクつかせながら、ようやく目を開けると、アレックスは余裕をもって微笑んだ。  見て、と言われたから、ロイは何を見ればいいのかわからなくて、とりあえずアレックスの顔を見た。優しく微笑むから、ロイは何とか落ち着きを取り戻せそうだった。 「ほら、ここ。触って」  ロイの手をその箇所に導いて、手のひらでそっと確認させる。ロイの薄い腹は、ほとんど肉がついていなければ、ろくに筋肉もなかった。  だから、その腹の中に何かが入っていて、おかしな膨らみになっているのがよくわかるのだ。 「やっ……な、なんで」  自分の腹の形がおかしいのが分かって、ロイは思わずそこに視線を持っていった。手のひらに触れる感触もおかしければ、視界に入る自分の腹の形もおかしい。 「ほら、分かるかな?」  そう言って、アレックスがゆるゆると腰を動かせば、ロイの腹の膨らみが形を変える。 「いっ……ゃぁ…ぁ」  ロイが頭を左右に振って、脅えた声を出した。そのせいで、身体中に力が入れば、アレックスは耐え難い締めつけを与えられる。 「ロイ、力を抜いて、ね」  優しく頭を撫でたところで、脅えたロイはただ頭を左右に振るだけだ。後ろからアレックスに抱きしめられるように座らされているから、ロイは目の前に縋るものがない。一番つかみやすいアレックスの腕を必死に掴んで耐えているのだ。 「言う事聞いてくれないなんて、ロイは悪い子かな」  さすがにアレックスも我慢がきかなくなって、ロイの腰の角度を変えた。もとから密着するようには座っていたため、ロイの膝裏に腕を回して、深い位置に自身を入り込ませた。 「あぁぁぁぁ、ゃめ、てぇ…くる…しっ」  腹の中をさらに押され、小さな動きだけれど、ロイからすれば薄い腹の中はそんなに広くはない。目に見える腹の動きに恐怖と苦しみがやってくる。 「ロイ……締め付けてきてるよ」  苦しさから、ロイが腹に力を入れてアレックスの腕から逃れようとする。そうすると、ロイの全身に力が入るから、アレックスが、締め付けられた。 「あっ……そ、そこ…だぁ…」  ロイを抱き抱えたまま、アレックスが腰を揺さぶるから、ロイの薄い腹はその衝撃のままに形を変えていく。苦しくて仕方がなかったかロイだけれど、アレックスが、魔法で痛みを取り除けば、本能が快楽を探し出した。 「あっ、あぁん……やぁだ、だ…たぁぃ…」  ロイの腰が、アレックスの動きとは違う震え方をし始めた。けれど、ロイは解放出来ないように施されているから、腹の中の熱がロイの中で出口を求める。 「ゃあ…ぁっい、熱いよぉ」  熱を解放したいロイは、アレックスの腕に爪を立てた。我慢なんて知らないから、ロイは背後のアレックスの肌に歯をたててきた。さすがに、胸から首にかけては皮膚が薄いから、アレックスも対処する。 「ロイ、いい子。我慢して、出さないの」  口を塞げば、完全にロイの出口はない。そのくせ、アレックスは、ロイの中に吐き出すための動きを激しくした。  ロイの口から、飲み込めきれない唾液がこぼれ、首筋を伝って胸へと落ちていく。  アレックスはそれを目の端で追って、何とか腕を動かして指先で拾い、ロイの胸の色の違う箇所に塗りこんだ。  皮膚が薄ければ、それだけ魔力が通りやすい。唇は、いま塞いで舐めたり啄んだりしている。残す二箇所には、指先で塗り込むように弄ってみる。  慣れてなければ、そこはまだ小さくて、指先で摘むと言うよりは抓るに近い形になった。二本の指先で、摘み上げて擦り付ける。口の端から零れるものをそのまま拭って擦りつければ、ロイの腰が跳ねるように動いて、中が激しく反応してきた。 「んっんっんっ」  息継ぎが上手くいかないのか、ロイの口から声が漏れた。息を吸おうとして、アレックスの唇を食んでしまうから、余計に上手くいかなくて、ロイの口からはますます唾液がこぼれてきた。  それにも魔力が宿っていれば、アレックスはそれをまた自分の手のひらで拭き取った。ロイの胸に擦り付ければ、今度は胸を擦り付けるように体をくねらせる。  貪欲に魔力を欲しがるロイの姿に、アレックスは満足した。 「可愛いロイ。ここで沢山受け止めてね」  アレックスがそう言って、ロイの腹を指先で叩いた。自然とロイはそこを見る。示された箇所は、胎内から押されて膨らんでいた。 「……こぉ、こ?」 「そう、ここだよ。沢山入れるからね」  アレックスは優しくロイの腹を撫でると、そのままそこを手のひらで押えたまま、胎内から激しく突き上げた。 「っああ、あ……ゃああん」  喉をのけぞらせ、宙に浮いた脚先は丸まって、ロイの身体が何度も震えた。目線が宙をさまよって、全身を数回強ばらせた後、ロイは脱力した。  ゆっくりとアレックスとの繋がりが解かれて、ロイの身体がシーツの上におかれた。敢えて片膝を立てさせれば、嫌でもテオドールはそこを確認せざるを得ない。眉ひとつ動かさないテオドールを眺めながら、マイセルはロイの腹を軽く撫でた。 「とんじゃった?」  けれど、それには返事がなかった。

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