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トリックオアトリート
「トリックオアトリート♪」
「はぁ!?」
スマホを眺めてぼおっとしていたら、肩を押された。上にのしかかってきたお前はとても楽しそうだ。
「お菓子、くれないの?」
「ないに決まって……」
寝室なのだ。菓子なんて甘いもの、あるわけがない。そう言ったら、着ていたTシャツを捲られた。
胸粒をはむっ、と口に含まれる。くすぐったい。
「こっちはベリーでしょ……、でこっちは……」
「何やって……、んっ…」
俺の胸粒をベリーと称し、象徴をバナナだと言ったお前の頭が下がる。
双果を手のひらで転がして「これはぁ……」とお前が言う。
何に例えるか考えているらしい。
ハロウィンはそんなイベントじゃない。けれど、何をするのか興味がある。
「っ……、悪戯、すんのか?」
聞いてみたら、「あたり♪」と言ってお前が笑った。
馬鹿な遊びだ。
わかってる。けれど、誘ってくるのなら、と身体を反転させた。
「トリックオアトリート」
同じ言葉を返して、下になったお前を見つめる。
「……お菓子、持ってない……」
答えを聞いて、俺はにんまりと笑った。
「じゃ、悪戯、決定だな」
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