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再召喚
「泰明 こちらの都合で召喚しておきながらこのようなことを言うのも気が退けるが…そなたは我々が望む神子ではなかったようだ。1年後元の世界へと帰っていただく」
無情にも目の前の男は黒髪黒目のあどけない表情をした少年へ告げた。
勝手に召喚しておきながら失礼な話と思うが〝ハズレ神子〝そんな異名をつけられた10才のオレはたいした成果もあげられず神殿に幽閉されて数ヶ月を過ごし召喚から1年後元の世界へと帰されたーー
それから10年が経ちあちらの世界の記憶もかなり薄れてきたころ再びオレはあの世界へと召喚された。
「ようやく…召喚に成功しましたぞっ」
「約10年ぶりのこと。今度こそ世を救ってくれる力を持つ神子であってくれると良いのですが」
元いた世界と重苦しい瘴気に満ちたこちらの空気の違いにまだ慣れていないオレは痛む頭を左手で抱え、召喚の儀式を行ったやつらを睨んだ。
見た光景だ…。
しかし、このような苦しさは以前はなかった。
オレの周りをぐるりと囲むように書かれた謎の紋様。
焚かれた香の甘ったるい香り…
見下ろされ突きささる複数の視線
「これ…あんたらまた召喚しやがった?」
嫌な記憶がふつふつと甦りオレはイライラの矛先を神官長に向けた。
「勝手に召喚して要らないからって送り返しておきながら、また召喚とか何やってくれてんの?」
「君は…」
しばらく考え、青年を爪先から頭へと見つめ神官長が口を開いた
「もしかして泰明 か?」
成長してあどけなさが消えスラリと背も伸び、声も低くなったが昔の面影を感じ神官長は首を傾げた
「だとしたら?またハズレで残念だったね」
泰明は不機嫌さをあらわにして神官長を睨んだ。
その様子を見て1人の神官が口を開き
「泰明…たしか神子の力をもたず送りかえした子ですね。これは…神官長殿…どうしましょうか?」
神官長へ指示を求めた
「召喚自体は成功した。以前には感じなかった聖力もわずかだが感じる。王には報告を」
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