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王城

登城を拒否することもできずに泰明は神官らに促されて王城へと足を運んだ。 しかし、王城へと近づくにつれ頭痛が酷くなりどんよりと王城のまわりを取り囲むように黒い霧のようなものが渦巻いているのが見え泰明の足は途中で止まった。 「う…」 「泰明…もしかして見えますか?が」 神官長が#(いぶかし)むかのような視線を泰明に送り尋ねた 「アレっていうのがもし黒い霧みたいな変な煙なら見えるけど」 「それは…」 目を見開き神官長は驚いた表情を浮かべた「もしかして火事?火事なら急がなくていいの?」 泰明は焦る様子のない神官長を不思議に思い首を傾げた 「なるほど…今回は瘴気が見え、しかも様子から察するに感じているわけか」 「え?これが瘴気…?」 10年前にも聞いた言葉だ。 この世界を長年支配している悪い空気でそれに飲みこまれれば精神が破壊される…とかなんとか そのために浄化ができる神子が必要でオレは召喚されたらしいが待てど暮らせど力が発揮されることはなかった。 世界そのものに瘴気が及ぶと破滅する…そんなようなことも言っていたはずだ。 なのにハズレ神子じゃ周囲が落胆するのも無理はなく召喚されて半年も経つ頃には疎まれるようになり会うたびにただでさえ厳つい顔をした王様は激昂していた。 正直会いたくない… 「泰明…これから王城に入るがアレが見えるのであれば心して進むように。油断していると飲まれるぞ」 「うん」 あー…ドキドキする 案内され王の間へと入ると禍々しいほどの黒いモヤが背を向ける王のまわりを取り巻いていた。 王はまだ泰明の到着に気づいていない 「何…あれ」 「王に取り憑く瘴気だ…まだ王位を継承して1年だというのにあれだけに発達してしまった」 「1年?」 「前王は…とてもじゃないが政務をこなせる状態ではなく今はダミアン皇太子が王位を継承し陛下となられた」 「ダミアン!?」 たしか前は皇太子でいちばん仲良くしてくれたひとつ年上の少年だったはず…記憶とは違う状況に泰明は驚きを隠せず大きな声をあげた。 その声に気がついたダミアンが振り返ると泰明に襲いかかるかのように霧が迫ってきて思わず泰明は腰を抜かした 「な…なっ…っ」 「どうされた?」 ダミアンは目の前に倒れこむ泰明に手を差しのべた 「陛下っ。軽々とそのようなことをされては…威厳をもたれてください」 「倒れるものに手を差し伸べぬことなど余にはできない」 やや疲れた表情のダミアンは変わらない優しい口調で側仕えに異論をとなえた

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