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第24話
幽霊がでなくなって、何日か、しばらくして、東城はソファーで広瀬の横に座ってテレビを見ていた。
彼は、自分にもたれている広瀬の右の耳朶を指でもてあそび、時々うなじや髪の毛をいじってくる。ほとんど無意識の動きなのだが、優しい指が気持ちがよく、広瀬は目を半分とじる。
テレビは、UFOや未知の生物特集のようなものをやっていて、怖い話と五十歩百歩の内容だ。
なんでこういう番組を東城が好きでみているのか、やっぱり広瀬にはわからない。東城も真剣にはみていないようだ。
ふと、東城の手がとまる。テレビで「いよいよUFOの映像が!」とかいうテロップがでたのだ。広瀬はそれが不満で、東城の手をつついた。
「ん?ああ、ごめん」東城は無意識であやまると広瀬の髪をすいた。
テレビがあおったわりには実際に映ったUFOの映像は闇夜に光がちらちらしているだけのたいしたものではなかった。テレビに飽きかけたのか東城が、広瀬の髪に唇を寄せてきた。
唇を合わせて、舌をからめていると、テレビから、番組の続きで、動物に化かされた経験について科学的に検証をしたという言葉が流れた。
田舎で道に迷ったところを知り合いに案内されてさらに迷い、しかも、それは知り合いではなかった、という体験談がながれる。
東城と広瀬はキスをやめてテレビを見た。そして、顔を見合わせた。
「たぬき?」と東城は広瀬に言った。
広瀬は笑った。「そうだったんですよ。あの偽女将」
後ろに座っていた双子の男の子はどちらかが、道で倒れていた子だぬきだったのかもしれない。
車で轢きかけたから、仕返しにいたずらされたのだろうか。それとも、道に迷っているのを助けてくれたのだろうか。
「あれが幽霊じゃなくてよかった。ずっと気になってたんだ」と東城はいった。
たぬきだってお化けなのに怖くはないんだ、と広瀬には彼の気持ちが不思議な気がした。人間の幽霊は怖くて、たぬきのバケモノは怖くないのだろうか。でも、特にその感想は伝えなかった。質問したら熱弁をふるわれて興をそがれそうだったので。
東城は、そんな広瀬の気持ちは知らない。
彼はリモコンを手に持ちテレビを消すと、広瀬にもう一度キスをねだってきた。
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