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第1話 ここは武林式世界。
――――――この世界の人々は、この世界を欸貝哦 世界と呼ぶ。いきなりなげぇよと思ったみんな、ごめん。でもこの世界、漢語っぽい文字なんだ。ひらがなカタカナないねん。しかも最後のな。ウァッだけど……これは気合いを入れて、まさに吐く時のように、【ウァッ】だ。分かったかな?
そしてさらにその中でもここは武林 式世界ーー日本語的に言えば武林風世界だ。
武林とは何か……?それはあれだ。誰がこの世界で一番強いかと言うことをとことんまで突き詰めたい何か凄そうな達人たちが己の限界に挑み、時には長ったらしい修行シーン(全カット)を挟み、最強を決めんとする何か凄そうな達人たちが集う世界……と言う意味だ。
そしてそんな達人仙人を決めても決めても決まらないのが常々なこの世界で、物心ついた頃から俺は前世日本人だった頃の記憶があった。そしてここが中華風……の中でも武林風世界だと認識したのだ。
さらに何故か母は男人 で、父も男人。この世界は男人でも妊娠出産できるらしいが、できるものとできないものがある。
分かりやすく日本のBLオタク用語に纏めれば、妊娠出産できる男人は哦性 と呼ばれ、その相手となる存在が欸性 と呼ばれる。漢字に関しては何かかっこよく見えるように地球の漢字だったらこうかな~ってのを当てはめてある。
そんなわけで俺の母こと媽 は哦性 。父こと爸 は欸性 である。
なおこの世界には、武林の他にも外の世界もあり、武林の外には女人と言う性、それから貝性 と呼ばれる攻めや受けではないBL外の男人もいると言う。
しかしまぁ、この武林。
前世腐男子だった俺には天国。至るところでBLカプ見放題。まぁこの武林の哦性 、マジで強いんだけど。ほんとみんな仙人級の達人だかんね。手合わせとか1日何回もやってやってやってやってやりまくって一緒に夕日の射す丘で語り合うんだ。何やコレ。
さらには細い腕でぶっ飛ばすものが多いが、中にはガチムチもいる。ガチムチ哦性 である……!ガチムチ同士のカプもいれば、体格差カプもおるやんけ!とにかくここじゃぁBL鑑賞し放題なのだ。ひゃっほいっ!!
さぁ、これからも武林BL楽しも~~っ!
――――――そう、思っていたのだが。
「アーナークォンダー・ホアン・リュイウーイェン」
やたらめったら長いこの名前が、今生の俺の名前だ。……おい、中華風どこ行ったよ。しかも黒髪ではあるが俺の瞳は天空色 である。武林風と言いきるにも無理ありすぎないか。
因みに【アーナークォンダー】はこの武林での俺の二つ名かな。
絞め技が得意だからってんで、武術の達人である媽 が自ら俺につけてくれたもの。
この武林では二つ名はとても大切なものだから、フルネームの必ず頭にくるわけだ。
その次の【ホアン】は姓だな。俺のこの世界での姓。しかしこの武林に暮らす武人達人はほぼほぼ【ホアン】姓。たまに【リー】さんとか【ヂャン】さんとかいるが、それは外から来た達人たちの伴侶の姓。
この世界では夫婦も夫夫 も別姓が基本だから、結婚してもわざわざ姓は変えなくていいのである。むしろ変えたらこの武林世界、【ホアン】さんしかいなくなる。
そして最後の【リュイウーイェン】が俺の名前。……ほんっとになっげぇよ……。ロンとかシュオンマオとかフェンフォンじゃあかんのかい……!
でも、外から来た爸 の名前は普通に漢字3文字だから……この長い名前は武林特有のものなのかもしれない。
そして俺の名を呼んだそのひとは、ゆっくりと口を開く。そう、俺が長ったらしく自分の名字 を解説していたのは、こう言う達人たちの果たし合いに於いてよくある謎の間!謎の間が展開されていたからなのだ……!
さぁ、早く続きおねしゃす……!これでも修行シーンは全カットです……!!
「もはやこのホアン武林に、お前にかなうものはいない」
ホアン武林。姓がホアンさんだらけだからだろうか、ホアン武林。いや、ここがホアン武林だからこそのみなすべからくホアンさん勢揃いなのだろうか。
しかし……まぁ俺は何故かこの武林で幼い頃から修行させられまくり、思春期にはグレて喧嘩しまくり、卒暴した後は真面目に修行。因みに卒暴は暴走族のことではなく、暴跑族である。ついでにこの世界に於ける【走】と言う漢字は歩くと言う意味である。いーや、歩いてどないすんねん……!走るわそかぁ……っ!もちろん自分の脚でな……!この武林にバイクなんてもんはない……!武器は使えども、自分の脚で駆け、跳び、仕留める方が早くて効率的な超人揃いなのがこの武林なのだ……!バイクになんて乗ってたら、後ろから追い付かれてバイクごと蹴り飛ばされる……!だからみんな、武林でバイクに乗るときはちゃんと交通ルールを守りましょう……!
そんなこんなで異世界武林ライフを堪能した俺は、遂に……。
武林の中でもホアン武林と呼ばれるここの武林で最強の名を冠する4人のウーシェンたちに勝ってしまった……。
因みにうちの媽 もそのひとり。このウーシェン巡りをするにあたって、媽 からも及第点をもらってる。
「だがしかし、我ら烈哦性 は戦いの中にいなければ、3ヶ月に一度の発情期 を乗り切れない」
うん、ウーシェンの話も分かる。俺たち烈哦性 は……。いや、てか、【オメガネス】って何だよだが、烈哦性 は哦性 の中の哦性 。哦性 の中でもとりわけ強い、軍神とも呼ばれる存在なのだ。……ネーミングが謎だが。
しかしそんな強い烈哦性 は、強いがゆえにその反動……と言うか、その強い血が暴走してしまう。反動じゃない、暴動だな。うん。暴走じゃないんだ。歩かないしむしろ爆速で追い回して暴れまくる。烈哦性 の場合は、1人でも立派な暴動になる。
そしてその暴動を鎮めるには戦って戦いまくって滾りまくりめくるめくなその血の沸騰をまぎらわすか、あるいは伴侶 の欸性 と過ごすしかない。過ごして何をするかと言うと……まぁ、セックスだとも。セックスですよ。情熱的で、貪り尽くすような激しい烈哦性 優位のセックス。もちろん烈哦性 はみんな受けだから、欸性 のちんぽを上の口でも下の口でもしゃぶりまくって絞りまくってチンハメスクワットでオラオラセックスしか勝たん。うむ、それだけだ。
まぁ、俺の場合は伴侶の欸性 がまだいないから戦いで気をまぎらわすしかない。思春期を迎えてから芽生え出した……烈哦性 の発情期 にはな。
「……だが、もうこのホアン武林にお前にかなうものはいない。つまりはだ」
「つまり……」
まさか……っ。いや、やっぱり遂に……キタッ!?
「外の世界に……欸性 狩りに行くのさ!」
「なるほ……っ」
いよっしゃあぁぁぁっ!異世界欸性 チンタマ狩りライフが……キタァ――――――っ!
俺にも遂にこの時が……っ。このホアン武林から出て外の中華風世界を見るチャンスがやって来た……!外の世界はどんな世界なのだろう。いきなりなんちゃってヨーロッパが始まっても困るけど……でも。
見てみたいなぁ。せっかく異世界に転生したのだもの……!中華コスプレもっと堪能したい……!中華料理嗚呼油条杏仁豆腐麻婆春雨刀削麺!
「そして、気に入った欸性 を見つけたら……もしそやつが地の果てに逃げれば地の果てまで追っかけて、巣穴に逃げ込めば巣に乗り込み、そのタマちんこをとことんまで食ってやんな……!」
ものっそい下ネタだが、それもなれたもの。ホアン武林では強い烈哦性 たちならではのエロエロ名言満載なのだ。俺的には妄想ムラムラ……!みんなエッロォッ!達人たちなのに考えてることは欸性 とのエロエロオラオラセックスのことだ!十中八九――――――――っ!!
「でも覚えておきな。気に入らない欸性 がいた時にゃぁ……」
「ウーシェン、分かってる」
俺の頷きに合わせ、ウーシェンと俺は同時に叫ぶ。
『鶏鶏睾丸一切都摘下了 !!!』
最後にウーシェンにお礼の拱手 を返し、爸媽 の元へと向かい早速外の世界に出る許可がおりたと報告した。それには爸媽だけではなく、同じ烈哦性 の弟弟 たちも喜んでくれて、そして旅立っていく俺との別れを惜しんでくれた。
その夜はご馳走を食べ、ぐっすりと眠った。最初はワケ分からない武林風世界だったけど、何だかんだで楽しかったかも。そう、感じながら……。
※※※
――――――――翌朝。
ホアン武林の入り口だと言うところで出会ってしまったのだ。
「私たちホアン武林の烈哦性 たちは外の世界を知らない。だからここの武林の領主・皇甫 一家の用心棒をしながら自分の欸性 を探すの」
と、媽 。解説はありがたいのだけど……。その迎えのために皇甫 一家の男人が来てくれたんだがそれは分かっているのだが……!
「あぁ……っ、君は私の、運命だ……!」
は……!?う、運命って……っ。
目の前のダークブラウンの髪に赤い瞳の青年が叫ぶ。彼は欸性 だ。そしてその欸性 に向けて抱く、この高揚感は何だ……!?まるで発情期 の時のような……っ。
「まぁ……、おめでたい!まさかの運命の番だなんて……!」
ちょま……っ。媽 、待って待ってマジなの……!?しかも、運命の……番……?その、ワードはまさか……!?
「これが……雄激 だろうか……っ!君の哦激素 が、来る!感じる……!!」
いや、目の前の帥哥 も何を……っ。まさか化けるのか。こいつも隠れた達人か何かか!?しかし……変形はしなかった。ちょっと残念だな。
しかし……雄激 ……?字はなんとなく分かるんだけど。あれ、待って。バトリモードの字って正確には発情期 だよな……?ちょっと腑に落ちない字だとは思っていたんだけど……。
「このホアン武林を出る君のために……項帯 を用意したのだが……番として、改めてオーダーメイドしたいな……」
そう告げた帥哥 の手にあったのは、まぎれもなく、項帯 !
「武林の外では、哦性 も烈哦性 も項帯 をつけるのがマナーなの」
と、媽 。あの、ちょま……っ。哦性 もって……その、まさか……っ。
「君の項を噛みたくて仕方がない……っ」
はい、キタコレ、確定――――――――っ!
まさか……まさか……哦性 って……烈哦性 のネーミングが全てを物語っている。
烈哦性 の【オメガ】は正真正銘の欸貝哦世界 の哦性 あぁぁぁぁっ!
マジかよ、主人公俺……。
――――――――――ルビ振り間違えておりましたあぁぁぁっ!!ごめんなさい!責任もってこの帥哥 欸性 の鶏鶏睾丸 いただかせていただきますうぅぅっ!!!
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